一生忘れない一瞬を (ページ2)

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のんびり朝食を食べたせいで最寄駅から猛ダッシュする羽目になった

チャイムと同時に教室に滑り込む

自分の席に着いて机の上に置き去りになっていたノートで顔を扇いだ

６月とは思えないくらい暑い

いや、全力疾走のせいか

涼しげな顔でこちらを見てくる宮近海斗が何よりの証拠

「なんだ間に合ったんだ」

「んね、絶対セーフって言ったっしょ？」

「これで1勝7敗」

今来たばかりの私をそっちのけで会話を弾ませるのは
隣の席のちゃかと、その前に座る中村海人

中間テスト後の席替えでなんとか勝ち取った後方３席

まぁ言ってもくじ運が偶々良かっただけだけど

もう一人の海斗こと松倉海斗の教卓前の席に比べたらかなりの勝ち席

『何の勝負してんの』

「Aが遅刻するかしないかの賭け」

『へー、どっちが勝った？』

「海斗が1勝で俺が7勝」

『うける、ちゃかボロ負けじゃん』

「絶対仕組まれてる
海人とA朝から打ち合わせしてる？」

「朝からコイツと話す暇ないわ」

『同じく』

遅刻常連のうみと私

朝は秒単位で行動する程時間に余裕がないんだから

それはもう、課題もお家に忘れちゃうくらい

『全然話変わるんだけどさ、古典の予習終わってたり
さらには見せてくれたりしない…？』

これでもかってくらいうるうるな目でちゃかを見つめてやった

「そろそろ有料化したい」

悪態をつきつつも私の机に置かれた古典のノート

炒った小豆みたいな渋い色

前にそう茶化したらワインレッドと訂正された挙句、暫く課題を写させてくれなくなったから口が裂けても言えないけど

『ちゃかありがと！』

「ね～終わったら俺にも見せて」

「海人は自分で頑張れ」

「は、なんでだよ」

『日頃の行いだね』

ちゃかと顔を見合わせて笑うと
差別だ～って騒ぎ出したうみ

流石にうるさかったのか、担任から忠告された

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