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(至side)



言い訳をしてしまえば、酔っ払って魔が差した。まさかこんなことになるとは自分でも思ってなかったんだ。



『…つーか、課長も人使い荒いと思いません?ただでさえ、今忙しいのに…』


「それだけ頼られてるってことなんじゃないの?」


『え、そうなんですかね?へへ。』



切り替え早すぎだろ。さっきまで昨日の夜の話をしていたのに、突然仕事の愚痴が始まった。昨日もそうだった。残業に付き合って、奢るからと居酒屋へ向かい、9割こいつの愚痴を聞いて、いつの間にか潰れていた後輩にうんざり。結局、お会計を済ませたのは俺。


そう、きっとそのままちゃんと後輩を起こしていれば。ああはならなかった。俺も珍しく酔っ払っていて、自分の住んでいる寮ではなく、近くのホテルに向かって_________そこからは昨日の通り。



去年、新入社員として入ってきたこの子は、何より元気で、他の女性社員と比べてハキハキとしているようだった。俺に媚を売ったり、好意を向ける素ぶりもなく、とにかく我武者羅に仕事頑張ります!というような熱血タイプ。


暑苦しいなと思いつつも、この子の教育係に任命された俺は、柄にもなく手を焼いていたと思う。要領は決してよくないけど、仕事はできる子だったから成長は早かった。今でも他の社員に比べたら気にかけていると思う。自分でも。



「弓原、起きて。」

『……ん、ん〜…』

「…ったく………うおっ!?」

『…ん?…だきまくら、かたい……』

「…………」



薄暗いホテルで、ベッドの上で抱きつかれてしまえば俺だって男だからそりゃ………。
相手は会社の後輩。間違っても手は出しちゃ駄目だとわかっていた。頭では。


だけど、いつもは元気でうるさいくらいの後輩が、すやすやと可愛らしい寝顔で眠っている。


………よく見たら可愛いじゃん。って、そう思ったのがいけなかった。



『先輩?昼休み終わりますよ。』


「…………」



ちらりと見える首元の絆創膏。罪悪感と優越感がぶつかり合って複雑な気持ちになる。はぁ…とため息をついて、空になった弁当箱を持って立ち上がる。


どう責任取ってくれんのかな、この子は。






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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時

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