綺麗な花に棘がある。【茅ヶ崎至】 (ページ43)

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「弓原？」

『……あ、卯木さん。どうも。』

「相変わらず覇気がないな。また悩み事か？」

『…卯木さんってエスパーなんですか？』

「お前が顔に出やすいだけじゃないか？」

朝の出来事があってから、茅ヶ崎さんと顔を合わせるのがなんだか気まずくて。ホテルのこともそうだけど、なんで茅ヶ崎さんは私のこと好きでもないのにキスとかできるんだろう。そういうもんなのかな。…よくわからない。

『ここだけの話、茅ヶ崎さんってどんな女性がタイプなんでしょう…』

「好きなの？茅ヶ崎のこと。」

『いや、そういうんじゃなくて。素朴な疑問というか、気になりません？』

「興味はあるな。」

『そうそう。そんな感じです。茅ヶ崎さんとそういう話しないんですか？…しなさそうですね。』

「俺が答える前に勝手に決めつけるなよ。しないけど。」

『ですよねぇ』

「大人同士の恋バナなんて誰も聞きたくないだろ。」

『うちの女性社員だったら食いつくと思いますけどね。』

何となく卯木さんの隣を歩いて、一緒に食堂へ入る。卯木さんが頼んだのはうどん。私は親子丼。この前と同じだ。卯木さん、また人間の食べ物じゃなくするんだろう。ちゃっかりマイ七味出してるし。

『……そういえば…劇団の監督さんって、誰かと付き合ってたりしないんですか？』

「監督が？俺が知る限りではないと思うよ。みんなそういう目で見てないっていうか。まぁ、一部の奴らは別だと思うけど。」

『へぇ…あんなに美人なのに。』

「あくまでも監督と劇団員だからな。お前も課長をそういう目で見れないだろう。」

『それとこれとは話が別では…』

「じゃあ、茅ヶ崎は？」

『見れないですね。』

「それと同じだよ。」

『あ、じゃあ……監督さんが、もし劇団の監督じゃなくて、ただの一人の女性だったら、卯木さんはどう思いますか？』

「難しい質問だな。」

『そうですか？』

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