リナリア

16 sideYu-ki ページ16

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彼女を初めて見かけたのは、電車の中だった。



その日の俺は仕事が終わり、ヘトヘトになりながら最寄り駅までの電車に乗った。


が、当然の様に帰宅ラッシュの為、椅子には座れず。



前に座ってる人が先に降りたら座れるからラッキーだな何て考えていると、自分の隣にお腹の大きい妊婦さんが立っていた。



立っている妊婦さんの近くに座っている仕事帰りのサラリーマン達は、全員示し合わせたかのように寝たふりをし始めて、あたかも自分は気付いていません、というような素振りをしていた。



まぁ1日仕事した後で疲れてるのは分かるけど、それはちょっとどうなのかなと思っていると、




「あ、あの…良かったらここ座って下さい」




蚊の鳴くような声が、自分の目の前から聞こえたので、声のした方へ目線を下げると、自分と同い歳か少し年下くらいの女の子がいた。


その子が立ち上がって「どうぞ」と、俺の隣にいる妊婦さんにもう一度声をかけた。



「いいんですか？」と申し訳なさそうに言う妊婦さんに、




「全然大丈夫です、丁度私次の駅で降りるので」




と笑顔を見せて、「ありがとうございます」とお礼を言った妊婦さんが座るのを見届けてから、次の駅で彼女は電車を降りて行った。





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