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 伊之助は思わず猪頭を外した。呼吸が苦しく、せめてもの抵抗であった。炭治郎も苦しげに顔を歪め、顔を伏せないようにするのが精一杯だった。
 Aの方から、ごうごうと音がする。
 燃えているような音だった。尋常ならざる量の酸素を薪に焚べ、彼女自身が地獄の業火にでもなったみたいだった。

 彼女は恐れるでも、笑うでもなく、ただ無感情に猗窩座を……その頸を見ていた。品定めというにもやる気のない視線である。

「……非礼を詫びよう。名乗っても?」
「では詫びろ」
「すまなかった」
「“ごめんなさい”」
「ごめんなさい」
「……用件は?」
「俺は猗窩座。十二鬼月、上弦の参だ」
「もう聞いた」
「お前の名は?」
「……花子」
「偽名か」
「さあ」
「まあいい。花子、お前も鬼にならないか?」

「め、めげねえなアイツ……!」
 伊之助は思わず小声でそう口にした。
 先ほど煉獄からにべもなく断られたばかりだ。それを、そんな馬鹿げた勧誘を、まさかあの人にしてみせるとは。

「聞いていた」
「では、どうだ?」
「理解はできる」

 猗窩座がうれしそうに笑う。
 幼い印象さえ受ける無垢の喜びだった。

「そうか、そうか!やはりお前は違う。違うなァ。お前なら、いいやお前こそが、至るだろう。極めるだろう。永遠の果てにお前は──」


 フッ、とAが笑った。
 笑った。
 聞き分けのない子どもを見るような、呆れた顔で。

「まるで、今は未熟だというような物言いをする」

 煉獄は、手繰りよせた意識でその言葉を聞いた。
 半分に狭まった視界でその姿を見た。

「……断ると?」
「必要がない、と言っている。その目は飾りか?この私に何が足りないという」


 ──老いることも、死ぬことも、弱さではない。
 人間という儚い生き物の美しさだ。

 けれど変わらないものもあった。
 俺は、そういうものに助けられてきた。
 折れそうなとき、母やあなたの言葉を思い出した。

 それは彼方に光る星のように。


「目に見て分からぬというのなら、まことの武の極致、しかとその身に刻むといい」

 ひときわ呼吸音が大きくなると、応えるように猗窩座が体勢を低くする。その威力を煉獄は身をもって知っていた。
 けれど、煉獄は笑った。
 元気があればきっと声をあげて笑っていた。

「梵の呼吸・参ノ型」
「破壊殺──!」


燦然世界(さんぜんせかい)


 繰り出されるは、秒間数十にも及ぶ斬撃。
 宵闇において白金色の日輪刀が残す残像は閃光のようであり、そこだけがポッカリと別世界のようだった。
 これまさしく、人智を超えた絶技なり。

急転直下→←ゝ



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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