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18滴 ページ19

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いつも通り、目を覚まして池の上まで泳いでレオとセナさんと楽しく笑い合う。それが日常なのに





『動かない……』





目を覚まし、足を動かそうとするも、その足は石のように動かなかった。
嘘、もうこんなにも弱っていただなんて……
私は自分の容態に驚きながらと焦りを感じる。このままではいけないと。




私は池の壁を伝いながら上を目指す。
やっとの思いで水面から顔を出すが





『雨……』





あいにくの雨だった。
最悪。雨は嫌いなのになぁ……
それに、今までの頑張りはなんだったのか。
私はそう心の中で呟く。
まぁ仕方ないと思いながら私は目を瞑った。




私の耳には雨の音だけが響く。
他の音は何も聞こえない。
……だから雨が嫌いなんだ。声も何も聞こえなくて届かなくて不安になるから。




また、ひとりぼっちになるから





『きらい』





そんな独り言は雨に溶けていった。
そのはずなのに





「なにが嫌なんだ?」


『っ、レオ?!』





突然、後ろからレオの声が聞こえてきて私は驚きのあまり肩を跳ねさせる。





『って、ずぶ濡れ!』





傘をさしていないレオはもちろん、ずぶ濡れでレオの結ばれた髪の毛先からは雫が落ちていた。





『風邪ひくよ?!』


「大丈夫!」


『いや、大丈夫じゃないから…………!』





何を根拠に大丈夫だと言えるのだろうか。私は笑っているレオに呆れていると





「それで?なにが嫌なんだ?」





私の独り言を聞いていたレオがそう尋ねる。その瞳は真剣で私は目をそらすことができなかった。





『わたし、もうダメなのかもしれない』





震えた声でそう言った。
雨の音がやけに頭に響いた。





『足も動かなくなっちゃった』





私は笑いながらそう言う。そんな私にレオは目を見開き、苦しそうな表情を見せた。





『まだっ、一緒にいたいのにっ……!』





それが私のたった一つの願いだった。私の頬には涙なのか、雨なのか分からないものが滑り落ちた。

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作者名:ぽぽ | 作成日時:2021年1月30日 12時

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