2話 ページ3
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少年「ま、待って!やっぱり困ってる!すごい困ってる!今すぐ助けて欲しいくらい!」
「全く…。初めから素直にそう言えばいいだろ。それでもう一度聞くが、俺と来るかい?」
少年「うん、うん、行く!」
俺が言ったことが余程怖かったのか、激しく首を縦に振っている。
頬も若干引き攣っている。
「それじゃあ着いてきな。」
少年「うん…。」
「…そういえば、少年。名前は?」
乱歩「乱歩。江戸川乱歩だよ。」
「そうか、良い名だ。」
そう言って歩き出すと、俺の歩く先に乱歩が立ち塞がった。
少し頬をふくらませて、不機嫌そうにしている。
乱歩「一寸待ってよ!僕は名乗ったのにお兄さんは名乗らないの?そんなの不公平だよ!」
「ああ、そうか。悪いね、忘れていたよ。俺の名は羅刹。好きに呼んでおくれ。」
乱歩「…羅刹?」
俺の名を聞いた乱歩は、信じられないような顔をして目を見開いた。
糸目で瞳が見えなかったが、緑の瞳が月に照らされて輝いていた。
ほう…翡翠みたいだ。
乱歩「羅刹って…悪い鬼のことだよね?どうしてそんな名前なの?」
「正確には名前ではない。ただ、そう呼ばれていただけだ。」
そう言うと、乱歩は少し俯いてぽつりと呟いた。
乱歩「…お兄さんは、不思議な人だね。」
「そうか?」
乱歩「うん。いつもは、こうやって面と向かって話せばその人のことがよくわかるのに、お兄さんのことは何も分からないんだもん。不思議だよ、お兄さんみたいな人は初めてだ。」
「…?そうか。…夜の森は冷える。早く帰るぞ。」
そう言って乱歩の手を握り、俺の家に向かって歩き出す。
森の街に近いところまで来ると、1つの屋敷が見えてきた。
大きさはまあまあある。
乱歩「でっか!?」
「そこまでじゃないだろ。ほら、入った入った。」
乱歩「あ…お、お邪魔します…。」
「違うだろ。」
乱歩「え?」
俺は乱歩よりも先に入り、乱歩に向き直って言った。
「ここは、今から俺と乱歩の家だ。…自宅に帰って「お邪魔します」なんて言うやつがあるかい。」
乱歩「!………たっ、ただいま!」
「フッ、おかえり。」
頬を赤らめご機嫌な様子の乱歩を横目に電気をつけた。
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作者名:七瀬 | 作成日時:2023年3月26日 2時