仲間になってないから裏切りじゃないけど、それは流石に非道いと思う【名前変換】

12話 ページ14

「闇斎さん！昨日、結愛ちゃんに何したの！?」

凍り付いた空気の中、声をあげた生徒が一人。
勇気がある。

『昨日ですか?私は桜井さんに呼び出されて、その後話の受け答えくらいしかしてませんよ?』
「しらばっくれるな！」

男が声をあげる。
全部録音してること知らないのかな。あ、知らないか。

「結愛さん言ってたぞ！お前に背中押されたって！」

いや、押してない。アイツ勝手に落ちましたけど。
桜井結愛。愛され気質の女。
ファンクラブもあるとかないとか。

「何ノコノコ来てんだよ学校！」
「よく来られたわね！」
「謝れよ！」
「謝りなさいよ！」

クラス全員のリンチはダサいぞ、マジで。
謝れコールがウザい。

『じゃぁ、私がしたって証拠は?』

罵倒が大きい。でも反論はしておく。
謝れ謝れじゃねぇよ。
証拠見せやがれ。

私は息を吸い込んで、大きな声で喋った。

『いっちょ前にグダグダ言ってんじゃねぇ！証拠見せてから話しやがれ！』

うわ、意外と大きかったな、声。
シーンとして皆こっち見ちゃったよ。

「(声と口調の変わりよう……。やっぱ、使える……。)」

「おはようございま〜す！」
「「「「(天使だ！！)」」」」

にこっ、とでも効果音がつきそうな笑みを見せる桜井。
なんなのこの茶番。
天使ってなんだよ。

桜井の空気の読まない登場で、大分空気が狂った。
やってらんね。トイレにでも行っておこうか。

すると、桜井とバチッと目が合った。
「ヒイッ！」

すると、その大きな目を潤ませて嗚咽を漏らす桜井。
「結愛……?」
「Aちゃんに睨まれて………!」

いや、睨んでない。
睨んできたのお前だろ。

「闇斎もうアンタはなんなの!」
「謝れ!」

罵倒が飛んできた。
もう駄目だ。このクラス救いようがない。

「皆………。もう、良いよ。Aちゃんが可哀想だよ………。」
「何言ってるの!可哀想なのは結愛だよ!」
「昨日も痛かったでしょう?」
「闇斎サイテー!」

その時チャイムがなり、稲野が入ってきたので解散となり、皆は舌打ちをして席に戻っていった。

そう言えば、と隣の佐中を見ればさっきのことはカンケーネーみたいな感じで文庫本をペラペラしていた。

………お前ホントなんなの。

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