第三章 続き ページ3
太宰治は自分でも気付いていなかった。
その行動には、自身の単なる私欲のうちの興味や好奇心も動機に入っていたなんて。
「……5時になったので帰ります」
一生で一度は言ってみたかった台詞第二位にランクインする台詞を言って探偵社を去る。
倒れたり解剖されたり色々あった今日だが、中島敦が書類を手伝ってくれた上に社員と共に何処かに望月が消えてくれたお陰で早めに帰れた。
望月は分かるが、中島敦は別に直属の部下でもないし、何か世話をしたわけでもないのに今日はどうしたのだろう。
嗚呼、まだ太陽が出ている。
こんな時間に帰るのは一体いつ振りだろう?さっき5時になったのでと言ったが、今はまだ実質4時45分位だ。
なので公園で遊ぶ子供たちの笑い声がまだ立春の寒気に包まれて響いている。
親に連れられて来たであろう子供。
友達と遊ぶ子供。
ペットの散歩をしている子供。
どれもこれも、自分には存在しなかったもので。そう思うと目の前がぼやけてきた。何故かは分からない。
「……帰ろ。」
地面に染みが出来たことに気付いても気付かないふりをする。
いつか何も気にせず遊んでみたいものだ。
Aはもう何も考えたくなくて機械的に足を動かして駅へと向かった。
「……何だったんだろ、太宰は。」
思考を現実に向ける。
矢張り思い出すのは奴だ。
太宰治という名の上司。そして、その先程の上司の行動に疑問を感じたA。
確かにAが悪いが、あそこまでする必要はあったのか?と思ってくる。
耳元でした声を思い出しゾクッとしながら駅ビルの中に入る。
「ねぇ、貴方。」
その時、幼子の声がした。
聞き間違いかとも思ったが、声がしたであろうほうを向くと、金髪の小学生未満であろう女の子がいた。
外国人のような顔立ちで明らかに高級そうな服を身に纏った余りにもご令嬢と言う雰囲気が出ているその子。
隣には保護者であろう男が二人いて急に見知らぬ女に話しかけたその女の子に少しびっくりしているようだった。
「どうされましたか?」
「これ、落としたわよ。」
丁寧な言葉で差し出されたものを見ると、確かに私の財布があった。
いつ落としたんだ?そう思っても分からない。私が?財布を落とす?
「ああ……助かりました。ありがとうございます。」
「そう。ならよかったわ。またね。」
ニッコリと笑って保護者と共に去って行った。
まぁいっか。私は改札に向かって歩き出した。
「……森さん。」
「嗚呼、中也。あの子が小泉だ」
その会話には、気づけない。
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綾部伊沙(プロフ) - 鯖印の鯖味噌味の鯖さん» 鯖!? 超絶久し振りだな 見てくれてたんですね! ありがとうございます!今から作りま〜す (4月27日 19時) (レス) id: b1825981c0 (このIDを非表示/違反報告)
綾部伊沙(プロフ) - 灯花さん» コメントありがとうございます! 続いてしまいましたね汗 もう少しお付き合い頂ければ幸いです。 今から続続編作りますね〜 コウカイデキルカハベツダガ (4月27日 19時) (レス) id: b1825981c0 (このIDを非表示/違反報告)
鯖印の鯖味噌味の鯖(プロフ) - わーいうれぴ🫶続続編頑張れ! (4月26日 21時) (レス) @page50 id: 18bb949ae1 (このIDを非表示/違反報告)
灯花(プロフ) - 続続編がんばれ!楽しみにまってます! (4月26日 14時) (レス) @page50 id: 118fbd2628 (このIDを非表示/違反報告)
綾部伊沙(プロフ) - 雪見さん» !!?!?? ありがとうございまずッッッッ 今日普通に塾だったしケーキ食べてないわで一寸寂しかったんですよ泣 あぁぁぁ嬉しいです!!覚えていて下さってありがとうございます! めっちゃやる気出ました更新頑張ります!! (4月22日 22時) (レス) id: b1825981c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾部伊沙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e8e9c819a37/
作成日時:2023年3月2日 18時