今日も社畜は探偵社で嗤う

・ ページ8

ところで、この前髪はブルーライトが当たりづらいのがいいだろう。
しかし、もう目は手遅れなので正直邪魔でしかない。

Aは前髪を上げて再び壊れんばかりの勢いでパソコンを打つ。

簡潔に言おう。
Aは仕事ができる。

早打ちは他の人と比べものにするなんてとてもじゃないが無理だ。常人が非情に哀れになる。
何しろ、常人が2時間かかる仕事なら、彼女は30分ちょいで終わらせてしまうのだ。

………今がどれだけ過酷なのか、おわかり頂けただろうか?

「やばい………終電やばい…………」

ダッ！

……と、キーボードを打つ手がピタリと止まる。その後Aはすぐさま保存に移り、転送した。

仕事は終わりを告げ、三徹ルート回避と言うことだ。

「やっと終わった………聡司!終電やばいから戸締まりと電気頼んだ!」
「おっけー。お疲れーしたー」

Aは慌ただしく外に出て行った。









気付けば、家の中だった。スーツを脱ぎ捨て
風呂に入り、いつの間にか布団のなかにいた。

柔らかい二日ぶりのその布団の感触にうっすらと笑みがこぼれる。

掛け布団の中に潜りながらAは今日も思う。

明日が来なくて職場に行かなくてよかったら、どれ程幸せなのだろうか。

そんな馬鹿馬鹿しい考えはダメだな、と我
ながら思うがそう思わずにはいられない。

もう、何が正解で何が苦しいのかが分からない。
異能があって恐れられていて………異能集団なら受け入れてくれるとか、私は何を考えていたのだろう?

そうさ。明日は、きっと＿＿＿

意識が遠退いていった。










ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

矢張り今回も朝が来てしまった。

空襲警報のようなサイレンが部屋に鳴り響く。一般的に言う、”目覚まし時計”だ。

この身を震わせる不協和音は何年聞いてもドキリと心臓が一瞬脈打ち、目がバチッと覚める。
まぁ、要するに嫌な職場に行くのにはぴったりって話だ。

「はぁ……………。行くか………。始発まにあわんくなるし……。」

現在時刻4時。
(作者は西日本なのでよく分からないが)、神奈川辺りの始発は調べたら午前4時台のようだ。

昨日帰ってきて寝たのが二時なので、睡眠時間僅か2時間ちょい。
その上その前２日に二徹キメているので相当不機嫌極まりない。

Aは支度をすませ、家のドアを蹴り開けた。
今日(社畜)が今日も変わりなく始まる。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す