温もり 中原中也(15歳) ミルクチョコレート ページ43
怖い。
目が覚めると、必ず魂の抜けた肉の塊が目の前には転がっている。
食事を探してさまよい、気を失い、気がつくとまた真っ赤に染った自分の手。
目の前に転がる肉、肉、肉。
こんなことになるなら、いっその事自分なんて…
何度もそう思い、ある時は川の前に、ある時は刃物の前に、ある時は輪っか状に結んだ紐の前に自分の身をさらした。
結果は全て失敗。
気を失い、成功かと思って目覚めると決壊しかけた川、ぐにゃりととぐろを巻いた蛇のようにひん曲がった刃物、跡形もなく引きちぎられた紐。
消えることも、満たされることも許されないなんて。
雨が降っている。
路地裏の隅に身を収め、じっと雨をやり過ごす。
そんな時だった
「おい、手前。」
黒くてオレンジでちっちゃいのが立っていた。
『チビ。』
鋭い瞳で睨まれる。
綺麗な青い目だった。
「初対面にチビはねぇだろうがこのガキ。」
『何の用だよ。金ならない、諦めて。』
「金になんか困ってねーっての。手前家は？」
『必要ない。』
あからさまに頭を抱えるチビ。
「俺は中也、手前は？」
『名前……A。』
「いい名前だな。」
初めて言われた言葉に、少し胸が暖かくなる。
その時だった。
ギュルルルルルルゥ
私の腹の虫が泣き喚いた。
「着いて来いよ、美味いもん食わせてやるから。」
『………ん。』
大人しく立ち上がった時だった。
目の前の風景が歪み、徐々に暗くなっていく。
私は…
この人のことも殺 してしまうのだろうか。
意識がはっきりとしてくるのがわかる。
しかし、
怖い。
あの綺麗なオレンジや青が散らばっている風景を思い浮かべ、もう一度ぎゅっときつく結ぶ。
「おい、手前起きてんだろ。」
『………え？』
うっすらと目を開けると、心配そうにこちらを見つめるチ……中也。
『生きてるの？』
「あんなんじゃ死なねえよ。」
『怖くないの？』
「手前がか？むしろ、ちっちゃくて可愛んじゃねぇの？」
涙が止まらない。
何故だろう。
こんなに泣いたのは家族が肉の塊になった時だけなのに。
「腹減ってんだろ？行くぞ。」
『焼肉ってのｸﾞｽｯ食べてみたい。』
「イジ汚ぇガキ。」
笑いながら頭を撫でた中也の手は、優しくて暖かくて…
初めて心が満たされた。
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ミレー様リクエストありがとうございます！
シリアスっぽくなっちゃいました。
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水上灯 - あのゴーグル恨んでやる、でちょっと笑いました(笑) (2022年10月13日 17時) (
レス) id: 278a10c8d3 (このIDを非表示/違反報告)
？ - 侍従長最高過ぎますｯｯｯｯ(泣) (2022年2月22日 0時) (レス) @page4 id: 5863b45db6 (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - 雪乃さん» 大丈夫です(v^ー°) (2021年2月24日 18時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
雪乃(プロフ) - ミィさん» ですね（笑）なんか可哀想な感じになってしまいました() (2021年2月24日 16時) (レス) id: e99d9af258 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃(プロフ) - 鮭大根大好きさん» きっと、きっと大丈夫です() (2021年2月24日 16時) (レス) id: e99d9af258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪乃 | 作成日時：2019年12月27日 23時
