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端的に言うと、いい匂いがした。
変態的に言うと、気持ち良かった。
あれから一週間以上が経ったというのにあの日のハグは頭にこびり付いて離れない。異常なほど何度もフラッシュバックする。
私より一回り大きい身体に包まれ、頭と腰は彼の手によって抑えられる。ふわりと香る彼の匂い。彼のふわふわとした黒髪が耳筋を擽る。
「………病気かよ私」
自販機にお金を入れ、何にしようかと悩む。
彼はあれからまた来なくなった。特別な理由は無いんだろう。カラオケなんてそう頻繁に来るものでもない気もするし、彼にも仕事があるし。
いや別に彼を待っていたわけじゃない。
黒髪でそこそこ身長の高い男性が来たら咄嗟に反応してしまうだけで。
……ああ。
「それを、待ってたって言うのか」
少し涼しくなったけどまだ冬は来ない。
一瞬ひんやりとした風が頬を掠めるが、缶コーヒーのボタンを押している間に去っていった。
今日はバリバリ平日だけど明日の授業は午後だったから、放課後にシフトを入れた。
もう当たりは真っ暗で、つい最近まではこの時間帯はまだ日が昇っていたことを思い出し、やっぱり冬はもうすぐ来るのかなと空を見上げる。
「……あれ？もしかしてAさん？」
ふと横から声を掛けられた。
時間が時間なので一瞬警戒で身体が強ばったが、可愛らしい声に聞き覚えがあって顔を向ける。
「…あ、……まふまふさん…？」
あはは、合ってたーとマスクを半分だけ下ろしてにこりと微笑む彼。
そらるさんの相方こと、まふまふさん。
「もしかしてお家この辺なんですか？」
「ここから近いわけじゃないんだけど、家に定期忘れてお金無くなっちゃったから歩いて帰るんだよー」
「…そうなんですか」
「…ちょっと残念？」
「いや全然」
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作者名：- | 作成日時：2018年4月27日 22時
