第五十七話 *シュラン* ページ9
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私は暫く、ジャンプして遊んでいるクシナダ様を眺めていた。すると、クシナダ様のポケモンのセレビィが私の顔の前に現れる。そして、私に話しかけた。
『ギラティナ、お前は覚悟できているのか？』
『……勿論。でなければ、私はこの事を承諾はしません』
私は目を伏せて言った。セレビィは一つ短い溜息をつき、またこう言った。
『そうか。分かっているのだな。人間と、ポケモンは決して交わってはいけないと。純血でいなければならないと』
『分かっているつもりです。だからこそ、私はこの時間を大切にしたいのです』
私は再びセレビィに向き直る。セレビィも、目線を外さなかった。
『……そうか。後悔しないようにするんだな』
セレビィはそう言って、クシナダ様の元へ行った。私は、先程の話で少し考えていた。もしも、クシナダ様が亡くなって仕舞ったら、私はどうなってしまうのだろうか。いつもの私に戻るのだろうか。それとも、もう私ではいられなくなってしまうのだろうか。そう考えてしまうと、私の心はきつく締め上げられる。苦しい。痛い。私はこの気持ちに打ちのめされそうになる。
すると、クシナダ様が此方に来た。すると、少し遠慮がちに、こう聞いてきた。
「ギーラ様が、この世界から見た人間は……どんな感じでしたか？」
此処から見た人間の世界……。
勿論、幸せそうに笑っている人間もいれば、楽しそうにしている人間もいた。
『……いつも通りでしたよ。楽しそうで、幸せそうな人間たちが多かったです』
話の前置きにそう言う。人間は、感情豊かで、随分と恐ろしく、それでいて儚く脆い生き物だ。苦しみと絶望を味わい、そして死に絶えていく。私たち伝説、幻のポケモンは、そんな事はない。幾らでも、人間の醜い所を見、また人間だからこその部分も見てきた。
『でも、その反面、随分と醜い物でした……。ポケモンを使って戦争、殺し合いをするなんて、そんな事は考えられませんでした。でも、それを考えるのが人間だと、同時に理解したものです』
クシナダ様にそう囁くように言うと、何故かクシナダ様が申し訳なさそうな表情をした。
『……どうしたのですか？』
「いえ、何か、申し訳なくなってしまって……」
『貴方が謝る必要はありません』
私はそう言って、彼女を慰める様に目を細める。
『どうしますか？まだ、この世界で漂いますか？それとも、帰りますか？』
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作者名：シュラン＆*ねこふとん* x他2人 | 作者ホームページ：
作成日時：2016年1月12日 18時
