episode 3 ページ5
子供達がばらけたところで自分も広場を後にした。
帰り道、いつものように歩いていると、見覚えのある顔がこちらへと向かって来た。
貴族、サタン・ダーティーである。
彼は今日も従者らしき人を連れて馬車に乗っていた。一瞬、目が合うが、直ぐに逸らされてしまい、馬車は通り過ぎて行った。
これは以前、彼と知り合った、と言うほどではないが、顔見知りとなった時から始まったものなのだ。
広場で物語を語っている時に何やら興味がありそうな顔彼はで近いて来たのだ。自分はそれに気が付き、彼の方を見ると目が合ったのだ。直ぐに逸らされて帰って行ってしまったが…
彼の噂は他の住民や知人から聞いていた。だが、実際に自分の目で見てみると話に聞く人物と結構違っていたような気がしたのだ。
まだ、自分が話した事ないからそんな事言えるだけかもしれないが、何故だか彼を心から嫌いになれないのだ。きっと、こんな事を知人に言ったら怒られてしまうだろうが、実際にそうなのだ。
兎に角、一度話してみたい相手ではあるが、相手は貴族、とても自分のような貧民が話しかけて良い相手ではない。
気になるのだが、話せない。なんとむず痒い事なのだろうか。
知人に相談するにも「話しかけない方が良い」と言われてしまうだろうし、もう、いつかチャンスが来る事を神に祈るしかないのかもしれない。
大袈裟だろうが、貧民と貴族の差はこんなものだ。
天地がひっくり返えらない限り彼に話しかける事など出来ない。
もし、仮に話しかけたとして、運が悪ければ刑務者行きだ。
同じ人だと言うのにこうも身分で壁が出来るとは、まったく、酷いものだ。
そんな事を考えながらソーンは自宅へと足を進めて行った。
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