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「Aちゃんは、お利口さんだねぇ」
『え?』
「泣かないの?寂しいって。泣きたかったら泣けば良いんだよ?」
『潤……』
「俺はいなくならないから」
Aちゃんの目に、涙が溜まりはじめて、それを流すまいと下唇を噛んでいる。
『分かんないもん、そんなの……』
「でもさ?意図的には絶対いなくならないよ」
何度も頭を撫でて言う俺を、真っ直ぐ見つめる瞳があまりに寂しそうで
みんなに心配かけないように、ずっと我慢してんだろうなって思ったら
ぎゅーっと俺の胸はキツく締め付けられた。
『……優しすぎます、潤は』
「好きな子に優しくするのは、当たり前なんですよ?辛かったり、吐き出したかったら、全身で全力でAちゃんのこと受け止めるから。聞かせて?それくらいの余裕Aちゃんよりちょっとだけ大人だからあるし(笑)」
なんて、わざと明るくするために俺は笑いながら言ったけど
Aちゃんはもっと涙を浮かべてしまった。
『あぁ……もぉ、何で』
「何が?」
『愛してくれた後にそんなこと言うのは、反則です……』
ついに頬に涙を伝わせ、俺の腕の中で、ぽつりぽつりと、昔の話をしてくれた。
お父さんとお母さんは、二人で歩いているときにブレーキが効かなくなった車にはねられて亡くなったこと
その時、お腹に赤ちゃんがいたこと
ご両親が亡くなってからは、おじいさんとおばあさんとジョージさんと、あの家で暮らしていたこと
近所の人たち含め、たくさん可愛がってもらって、たくさん愛してもらったこと
だけど、みんなが気を遣ってくれるから、寂しいって素直に言えなかったこと……
『寂しいって言ったら、みんなから捨てられてしまうような気がして』
「何でそんな」
『こんなに愛してやってるのに、こんなに可愛がってやってるのに、寂しいなんて思うのはわがままだろって。そんなこと祖父たちは思ってないかも知れないんですけど……幼いなりにそう思ってしまって』
「思ってなかったと思うよ。ジョージさんも」
『どうかなぁ……。あの人、私のせいで婚期遅れたから』
「Aちゃんのこと大好きだからそばにいたかったんだよ」
『ふふ……あー、ごめんなさい。もぉ……いっぱい泣いちゃう』
「いいよ。いーっぱい泣いて」
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作者名:鈴 | 作成日時:2020年12月16日 14時