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『え、何にも言ってないじゃん！好きだよ？好きだけどそんな急に言われても困る！』
「はい！好きいただきましたー！」
『ちょっと話聞いて！』
「聞いてるよ。だからゆっくりでいいから恋人同士に戻らないか？今は日本に帰って来なくていい。でもその代わり連絡はマメに取り合おう？」
『でも……！』
「ごめんけど、今度は譲ってやれない。ちょっとでも俺が好きなら今すぐ俺の女になれ」
翔さんの強引さに戸惑うけど、私の気持ちはあっという間に簡単に持ってかれて
10年前に置いてきた、翔さんへの好きが抑えきれずに、今にも溢れ落ちる……。
「泣いた顔も可愛い」
何も言えずに涙を流した私の頬を、優しく撫でるからもっと涙が溢れた。
翔さんの真っ黒い瞳に私しか映っていなくて、吸い込まれてしまいそう。
翔さんを好きになったら辛いってよく分かってるのに、それでも好きが溢れるのは
翔さんといたあの時間は、10年経っても宝物のままだったからだ。
思い出さなくなったんじゃない、何とも思わないなんて嘘。
好きすぎたから、私だけの宝物にしておきたくて、思い出したくなかったんだ。
私もこの10年間、翔さんと一緒だったのかもしれない。
翔さんの情報を遠ざけて、忘れた振り、思い出に蓋をしただけで
好きで好きで仕方なかったのかもしれない。
「A、もっかい俺と付き合お」
そう言われながら抱きしめられた腕の中は温かくて、やっぱりあの時のままで、夢のように幸せだった。
『逃げたんだよ、私。翔さんからも世間からも怖くて逃げた。すごく弱いの。けど、翔さんと会って、10年前に遠くに置いてきた好きがね？今はすぐそこにあって、きっと翔さんのこと、好きなんだけど……だけどその好きな気持ちにまた手を伸ばすのが怖い。胸がギューって苦しくなる』
「大人になると、色々考えるし、しがらみとか我慢も覚えるよな。けどちょっとでも俺が好きなら何も考えずにこっちにおいで？今度こそ二人で一緒に乗り越えよ。大丈夫だよ。一人で抱え込まなくていい」
翔さんの言葉に小さく頷いた私を、もう一度強く抱きしめ直して
私もゆっくりと翔さんの背中に腕を回したら、翔さんが嬉しそうに笑った。
「一時帰国の際は一報を」
『はい』
「テレビ電話しような？」
『はい』
「昨日の夜ベッドの中、めちゃくちゃ可愛すぎて興奮した」
『超変な格好で好きとか言ってきて面白かった』
「おい！(笑)」
『ふふ』
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年1月21日 13時
