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考えているうちにうっかり寝てしまっていたらしく
俺の肩にはブランケットが掛けられていた。
顔を上げるとAも教材を作ってそのまま転寝してしまったらしい。
寝顔を見たくて髪の毛をそっと退かすと、長く緩くカールしたまつげと、真っ赤な唇が無防備に少し開いていた。
それが可愛くて可愛くて仕方なくて、そっとバレないように頬にキスをする。
眉をしかめたAだったけど、そのまま寝続けた。
寝室に運んでやろうかとも思ったが、あまり部屋を散策されるのは嫌だろうと思い直して
俺のブランケットをかけてやった。
もう少しだけ、Aの寝顔を拝むことにする。
可愛いから。
『ぅわ！寝てしまった！今何時？！あーーー！やっば！寝坊した！ちょっ、翔さん！起きて！寝坊した！学校遅刻する！』
「んあ？え、やべーじゃん」
『やべーどころじゃない！とりあえず顔洗って歯磨きして……バス間に合わないから車！』
教材が出来上がって、安心してそのまま寝ちゃったみたい。
これはまずい！本当に遅刻する！
寝起き10分でなんとか出掛けられる格好になったけど、翔さんをどうする？！
『私もう仕事行くから！鍵……』
「俺も一緒に連れてって♡」
『はぁ？何言ってんの？無理だよ！』
「見学出来ないの？」
『自分の言ってること分かってんの？』
「分かってるよ。早く行こう。遅刻する」
『あ"ーもー！考えてる暇がない！車乗って！』
プノンペン市内のホテルって言ったから適当にその辺で降ろせばいいかって、車に乗り込んだ……のに
『何故降りない？』
「寧ろ何故降りる必要がある？見学するって言ったじゃん」
『いや、色々通り越して怖いんだけど。何』
「なぁ」
『なに』
「俺のこと、一人の男として、もう好きじゃない？」
朝から何聞いてんの……。
思ったより真剣な声と眼差しだと、見なくても分かるから、どう答えていいか分からなくなって、何も言えなかった。
「俺は好きだよ。10年ぶりに会って、再確認した。好きだよ。もう絶対離したくない。守っていたつもりだったあの頃とは違う。本気で守る自信しかない。Aが俺の隣にいてくれるなら、どんな手を使ってでも守る」
『その言葉、嬉しいけど……今はまだ、日本に帰るつもりないよ』
「遠距離でも構わない。俺のAでいてくれるなら、物理的距離は気にしない」
『なんでそこまで……』
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年1月21日 13時
