白椿【ars/S.S】 (ページ44)

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『そう。大変ね？お疲れ様』

「Aも。てか、大人になったな……。綺麗になった」

そう言って、私の頭を撫でてきた。

大きくて優しい手と指が、私の髪を掬っては離れていく。

振り払えばいいのに、あまりに懐かしくて心地いいから、出来なかった。

『翔さんの周りにいる方の方が綺麗でしょ？』

「俺はAのが綺麗だと思うよ」

『やめてよ、恥ずかしい』

「本当だよ。Aが一番」

社交辞令ってわかってても嬉しくて、顔を上げられない。

翔さんからの悪戯な視線が恥ずかしい。

「なぁ？」

『なに』

「照れると耳赤くなんの、変わってねぇのな？」

そう言いながら、私の耳に翔さんの指先がそっと触れた。

『やっ……めて、よ。びっくりするでしょ』

「目が潤んでる(笑)何で？」

『ビール飲んだからでしょ。仕事してるんだから邪魔しないで』

「Aせんせー」

『からかうのやめて』

「Aせんせーは今、彼氏いますか？」

『……プライベートな質問には答えられません』

「好きなタイプは？結婚相手に求める条件は？年収はどのくらいあればいいですか？」

『最後の質問は生々しすぎますね』

「俺のタイプはね、Aせんせー。結婚相手に求める条件はAせんせー。年収は全く関係ないね。俺がえぐいほど稼ぐから。働きたかったら働けばいいし、専業主婦になりたかったらなればいい」

『そうですか』

冗談でも日本のトップアイドル、嵐の櫻井翔にこんなことまで言わせてる私って一体何者なんだろうか。

そして何で翔さんはそんなことばっかり言うんだろう。

きっと勝手に冷蔵庫からビールを取り出して、飲みすぎてるからかもしれない。

翔さんは昔話をしたり、何度も同じ話を繰り返すのが酔っ払った証拠だ。

なぜ相手にされない？！

本気で想いを伝えてるのに！

今すぐ押し倒してキスしてやろうか？！

俺の話しをマジの片手間で聞くAの横顔を見つめる。

真っ白だった肌は、あの頃より日に焼けていて、健康的に見えたけど

あとは何ら変わりなく、愛らしい表情が垣間見えて

やっぱ好きで好きで大好きだと、心が叫ぶ。

けど、こんなに近いのに、Aの心が遠い。

せめて……あの頃と同じ関係性を築けなくてもいいから

もっと近くなり、俺の気持ちがAの心にちゃんと届く方法はないだろうか。