白椿【ars/S.S】 (ページ1)

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『ねぇ、先輩？』

「なんだね、後輩」

『就活って果てしないですねぇ……。どうしたら内定もらえるんだろぉ』

夕暮れのゼミ室で、小さな古びた机を挟んで向かい合って座り

就活に悩みまくってる目の前の俺より2年後輩の女の子……

元い

俺の彼女が頬杖をついて、ため息混じりで聞いてきた。

内容と声色からは、なかなかの深刻なはずなのに

頬杖のおかげで両頬がムニッと上がって、その深刻さがいまいち伝わらず面白い顔になっている。

可愛い奴め。

「どうしたらいいか……についてはよく分からねぇな。何故なら俺は頭の良さと、顔の良さが備わっているが故に、あ、それと運動神経もだな？だから就活なんぞしなくても嵐に就職出来ちゃったから。まぁジャニーズ事務所の言わば契約社員のようなもんだが」

本当になかなか決まらないのを知っているから、聞くたびに不憫で、まともに答えてやらないと、とは思ったけど

目の前に座る彼女の笑顔が見たくて、つい冗談混じりで答えた。

『……先輩に聞いたのが大間違いでした(笑)』

俺が求めていたパッと花が咲いたような笑顔ではなく

見本のような苦笑いが返ってきた。

「ふん、まぁ俺は就活を経験してないからアドバイスは難しいけど、強いて言うなら、がむしゃらに受けるだけじゃダメなんじゃね？Aの場合は、具体的にやりたいことがないから、どの会社を受けても、どこか自信がなさそうに見える」

『見つからないんだもん、やりたいこと』

「世の中の人間が自分のやりたいことを仕事にしてるなんて、きっと少ないからなぁ。ある程度妥協もしてるだろうし。焦っても仕方ないから、よく考えたら？」

『んー……』

俺にアドバイスを求めたくせに、納得いってないような、納得したような曖昧な返事をしながら

頬杖をやめて、自販機で買ってきた紙コップの温いミルクティーを飲み干した。

Aとの出会いは単純で、ありきたり。

学年は2年違えど、同じ学科で、なおかつゼミが一緒。

さらに家も近いときた。

だから定期的に開催されていたゼミの飲み会やら、集まりで自然と距離が縮まっていって

気付いたら、俺が卒業してからもグループ、若しくは一対一で周期的に会うのが当たり前になって

そして、去年の夏の終わりに俺から告白して、付き合うようになった。

自慢じゃないけど、俺的にめっちゃ可愛い。

どこがと言われたら難しいけど……

とにかく存在が可愛いんだ。