俺にしといたらええやん【HQ 宮治/宮侑】完結

2.好きと理由 ページ2

それからというもの倫太郎に


世話係を押し付けられた治と私が


打ち解ける理由は


それで充分だった訳だけれど、








「そういや、なんでツムのこと好きなん」







『へ？』








突然の治からの問いかけに間抜けな声が出る。








「女癖は悪いし口は悪いし、


あんな奴のどこがええんやろ思て」








確かに転校以来、


侑くんの女癖の悪さはよく耳にするし、


ファンの女の子を


罵倒するシーンも目撃済みだ。









『……自分でもよく分かんない、かも』









「一目惚れなんか？」









ますます不思議そうな顔をして治が言う。


私自身が一番自分の気持ちが分からない。


一目惚れっていう言葉が果たして


この気持ちに合っているのかさえも。








『うーーん、そうなのかな』








「同じ顔の俺には一目惚れせえへんの？」








『治は友達じゃん』









最早自分が何を言っているのか


よく分からない。


そっくりな双子の片割れだけに


胸が踊るこの気持ちを言語化することは


今の私には難しいことだった。









「………」









何も言わない治の顔を覗き込み、


肩をつつく。









『おーい、自分から聞いといて無言はやめてよ』









少し揶揄うように声を掛けても


治からの返事はなく、


静まり返ったいつもの帰り道を二人で歩く。










「俺がAのこと好きでもそれは変われへんのか」










しばらくの沈黙の後に


治が発した言葉に耳を疑う。


有り得ない聞き間違いをしたんだろう。


治が自分のことを好き？


自惚れているにも程がある。


そう思っていた矢先、












「俺にしといたらええやん」











『…え？』











さっきよりも芯の通った声で


発せられたその言葉は、


聞き間違いなどする筈もなかった。












「俺はツムの代わりでもええよ、

それでAの気持ちが変われへんかっても、な」

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