検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:124,649 hit

七着目 ページ7

「あの……南水さん」
「はい?」

止まることなく動いていたペンは呼びかけによって動きを止めた。

「中原幹部に渡す書類の事なんですけど…」
「はい」
「その………機嫌がよろしくないようで……」

ああ、とAは思い出すように頷いた。

「わかりました。私からお渡ししておきます」
「すみません、ありがとうございます」

新人にとって中也の不機嫌ほど恐ろしいものはないだろう。
別に八つ当たりをするような人間ではないにしろ上司の怒りは見ない方がよろしい。

Aは数枚にまとまった書類を手に中也の部屋を訪れた。

「失礼します」
「誰だ」
「南水Aです。中原様、書類をお渡ししに参りました」

中也の机にそっと書類を置くと中也の顔はしかめっ面になっていく。

「なんで手前がこんな書類持ってくるんだ。新人の役目だろ」
「貴方様が不機嫌で恐ろしいからですよ」
「ああ?巫山戯んな」

どうせ大嫌いな元相棒と何かあったか首領関連かだろうがAが解決できる問題ではない。

中也の機嫌は時間が解決してくれるのを待つしかないのだ。

「巫山戯てません。綺麗なお顔が歪んでしまってますよ」

ニッコリとAが笑うと中也はポカンとなった。

「……は、」
「?」
「綺麗?俺が?冗談だろう」
「こんな時にご冗談など申しません」

子供のように目をぱちくりさせる中也。

「ああ…そうか、ピリピリしてたもんな……」

独り言を呟きながら中也はため息を吐いた。

「今度の仕事が3日くらい寝れなくなるようなやつでな……寝不足が続いてたし…Aの言う通り、不機嫌だったかもしれねェ、悪い」

律儀な上司にAは笑を深くさせた。

「構いません。貴方様のサポートが私の仕事です。どうぞなんでも話してくださいませ」

椅子に深く座っている中也はAを見て微笑んだ後、微笑みに合わない愚痴を零し続けた。

八着目→←六着目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (205 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
224人がお気に入り
設定タグ:男主 , 中原中也 , 文スト
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ハル - 面白かったです!とても感動しました!主人公が選んだ服や帽子を今も着ていると思うとグッとくるものがあります!大切なものを大切にしておこうと思いました!とてもよい話をありがとうございました!! (2017年1月27日 21時) (レス) id: d2f978314e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 加奈さん» ありがとうございます!!距離感は大切に書いていますのでそういう点に着目して頂けたのは嬉しいです! (2017年1月18日 7時) (レス) id: 2f9be25c6d (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - もうなんか男主くんと中也の距離感が素敵過ぎて悶えますこの小説大好きです作者様ありがとうございます…… (2017年1月16日 21時) (レス) id: 191a0f55fe (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 天さんさん» ありがとうございます! (2017年1月12日 22時) (レス) id: 2f9be25c6d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - めっちゃ面白いです!!中也はやはりイケメンですね(吐血)更新頑張ってください! (2017年1月12日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2017年1月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。