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四着目 ページ4

「失礼します」

いつもの挨拶とノックの後Aは静かに扉を開けた。

ベッドの上には中原が仰向けで寝ており、苦しそうに息を吐いている。

「会食のキャンセルできました。お身体の方はどうですか?」

細めた目で自分を見つけようとする中原にAは一言添えて額に触れた。

「っ……!」
「失礼致しました。何かお持ちしましょうか?」
「食欲ねぇ…………」

Aの手を弱々しく握りながら呟く中也にAは膝を折り目線をあわせた。

「ならばお粥を用意します。一口でもいいので食べてください」
「ああ……わかった」
「…お手はお離ししてよろしいでしょうか?」

掌から伝わる中也の熱により自分の手が熱くなる。
冷えきっていた手は今では熱いほどだ。

「ああ……わるい……」
「いえ、氷枕をお持ちしますね」

昨夜の薄着により体調を崩したのは言うまでもない。
朝はなんとも無いと思っていたがAは休んだ方がいいと強く言うのでそのまま休んでいた。

案の定、Aの言った通り体調は悪化していき先程測った熱は39度近くあった。

流石の中也も熱にはかなわずベッドに横たわり、看病を頼んだ。

「中原様、氷枕とお水お持ちしました。食事が済んだらお薬を用意します」
「A……2人きり………」

こんな時まで、とAは呆れたがここで歯向かえば中也の体調が悪化せざるを得ないので従う事にした。

「中也、書類は俺が片付けておくから」
「はは……道化師め」

中也は昔からAをそういう風に呼ぶことがあった。
最初に呼ばれたのは中也と出会って1年目の頃だった。

Aが立ち上がるとドアがノックされた。

「はい」

すぐに仕事のスイッチを入れ、Aは扉を開ける。
食事を受け取ると扉を閉め、ベッドに近づいた。

「中原様」
「A、何度も言わせんな」
「…………中也、お粥ができたからひと口だけでも食べて」

土鍋の蓋を開けると卵で閉じられた粥が湯気を飛ばす。
不安定に揺れる湯気をぼーっと見つめながら中也は体を起こした。

「はい」
「ん、悪い」

取り皿に少量の粥を盛り中也に渡すとAは机の上に山積みになっている書類に手をつけた。

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ハル - 面白かったです!とても感動しました!主人公が選んだ服や帽子を今も着ていると思うとグッとくるものがあります!大切なものを大切にしておこうと思いました!とてもよい話をありがとうございました!! (2017年1月27日 21時) (レス) id: d2f978314e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 加奈さん» ありがとうございます!!距離感は大切に書いていますのでそういう点に着目して頂けたのは嬉しいです! (2017年1月18日 7時) (レス) id: 2f9be25c6d (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - もうなんか男主くんと中也の距離感が素敵過ぎて悶えますこの小説大好きです作者様ありがとうございます…… (2017年1月16日 21時) (レス) id: 191a0f55fe (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 天さんさん» ありがとうございます! (2017年1月12日 22時) (レス) id: 2f9be25c6d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - めっちゃ面白いです!!中也はやはりイケメンですね(吐血)更新頑張ってください! (2017年1月12日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年1月4日 0時

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