検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:124,630 hit

十四着目 ページ14

手を伸ばせば届くと思った。
この手を拒む者など、そういないと。

そして、一線を引いていたのはいつだって自分だと。

それが思い込みだと気づいた時の心の穴は簡単に埋まりそうにない。

「雪…………」

東北の方では降っているのが予想できたが横濱でも降っているとは思わなかった。

最近は異常気象が多いからか、そう大げさに驚かなかった。

暫くすれば霙になり、そのうち雨になるだろう。
その間に帰らなければならないのだが中也の足はビルから離れていく。

帰ったらAがいる。
Aに会いたくない。
だから離れる。

当然だろう。
そう、当然だ。

正当化するように外れの方へ歩いて行く。

「さみぃ……」

春の半ばと言っても雨にうたれれば体は冷える。

「結局Aにとって俺はただの上司ってことか」

一線を引いていたはずが引かれていた。
中也のプライドが崩れて行く。

いや、プライドではない。
信頼していたし、自惚れていた。

Aは自分に隠し事などしないと。

「そうですよ」

肩に落ちていた雫が途切れる。
傘だ。

顔を挙げずともわかる。
中也は鬱陶しそうに「何しに来たんだよ」と言ってみる。

「上司に風邪ひかれたら手前の仕事が増えるからかよ」
「そう言えば満足ですか」

冷たい声だ。
初めて聞いた声に中也はゆっくりとその瞳を見つめた。

十五着目→←十三着目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (205 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
224人がお気に入り
設定タグ:男主 , 中原中也 , 文スト
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ハル - 面白かったです!とても感動しました!主人公が選んだ服や帽子を今も着ていると思うとグッとくるものがあります!大切なものを大切にしておこうと思いました!とてもよい話をありがとうございました!! (2017年1月27日 21時) (レス) id: d2f978314e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 加奈さん» ありがとうございます!!距離感は大切に書いていますのでそういう点に着目して頂けたのは嬉しいです! (2017年1月18日 7時) (レス) id: 2f9be25c6d (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - もうなんか男主くんと中也の距離感が素敵過ぎて悶えますこの小説大好きです作者様ありがとうございます…… (2017年1月16日 21時) (レス) id: 191a0f55fe (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 天さんさん» ありがとうございます! (2017年1月12日 22時) (レス) id: 2f9be25c6d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - めっちゃ面白いです!!中也はやはりイケメンですね(吐血)更新頑張ってください! (2017年1月12日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2017年1月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。