#07-2 ページ28
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ちょっと寄っただけ。
今度、海人くんに会いなよと一言伝えるだけ。
少し、時間があったからそれだけ。
微かな記憶を辿って、確かここだったはず。
ムーディなライトで照らされた扉の前で
それだけ、それだけだから
一体誰に言い訳を言っているのか
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ふわっといい香りが広がる店内に
「いらっしゃい」と声がすると
私に気付いてママが近付きギュっと抱き締められた。
ママ「また来てくれるって信じてたわ」
大袈裟だな、と思ったけど
こんなに喜んでもらってるんだと
抱き締める力で分かる。
なんだか、嬉しいな…
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ママ「座って」
ママに一番近いカウンター席に座ると
シュッと煙草に火をつけて
まじまじと顔を見られ、思わず下を俯く。
ママ「会いに来たの?」
「その…」
ママはそれ以上何も言わず、
他のお客さんに話し掛けいて
また私の前に来ると、
ママ「そうだ、よかったら食べてくんない?」
約5分後に「はい」とニコニコと小さな丼を置く。
それを見た他のお客さんから
「いいなー」「俺達には?」とママに訴えると
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ママ「うるさいわねぇ、、
これは特別なーの‼
食べたいなら、いつでも作ってあげるわよ、
私特製の親子丼‼」
それでも納得しない
お客さんを無視して、
私に体を向けると
さぁ食べてと、めっちゃ反応待ちされてる
「…美味しい…です」
ママ「でしょ」
そこまで鈍感じゃない。
ママは私たちのことをきっと知っている
「ママ、あの…」
ママ「…条件が付くけどいいかしら?」
1本の赤ワインに2つのグラス。
さすが商売上手なだけある、ゆっくり頷くと
コルクを取ると気持ちいい音が店内に響いた。
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作者名:おもち | 作成日時:2021年2月22日 19時