終『少女仙人は璃月にて』 ページ20
「今の璃月は、お前の目にどう映る。」
月明かりよりも眩しくあたたかな灯りを放つ璃月港の建物たち。それを眺めながらお酒を嗜んでいた帝君は、横にくっつくよう座る私に視線を向けるとそんな事を聞いた。
国として安定した璃月。3700年の歴史の中で私が知っているのは2200年だけ、安定にはまだ遠い時代しか知らない。それでもほんの数日、今の璃月にいて感じるものはたくさんある。
ぼんやりと璃月港を眺めながら何を言おうかと考えて、また帝君へと視線を向ける。
「……今の、平穏無事な璃月はかなり気に入っています。ただ…「人」の思いはかなり複雑になっているみたいで…」
「はは、そうだろうな…だがあらゆる感情を受け取るお前が押し潰されることは今のところ無いだろう。」
「あの時は…帝君がいたから我慢出来たんですよ。」
恐怖に支配されて泣いてしまった夜も、不安に押し潰された時も、帝君は私のことをそばに置いてくれた。今の私は帝君が居たからこそここに立っている。
「…ずっとずっと、あなたをお慕いしています。」
「……。」
「帝君…？」
お酒を煽る手が動きを止めた。ふわりと、不思議な感覚に包まれるのを感じていると、帝君は何も言わないまま少し苦しいくらいの抱擁をしてくる。
背中に手を回し、トントンとリズム良く叩くと余計に力が入った。
「くるしいです帝君。」
「……しばらく我慢してくれ、俺のためなら出来るのだろう。」
「…はい。」
しばらく動く気配は無さそうだから、帝君の体温に身を委ねて目を瞑ると色々なものが流れ込んできた、私が居なかった間の反動が今来てるんだと思う。
心地良い、静かな時間が過ぎて行った。
「A。」
「はい。」
「これからもここ璃月で…俺と共に歩んでくれるか？」
まるでプロポーズみたいだなんて思ったりして。帝君の言葉に首を横に振ることなんてあるわけがない、それを分かっているはずなのに…それでもその瞳は少し揺れていた。
「契約が無くても、私はあなたと共に居ます。だから…ふふ、そんな顔しないでください。」
「…なぜ笑う。」
表情が拗ねた子供のようで、そんな顔を両手で包み込んで私は口角をあげる。
私だけが知っている、帝君のこんな顔。
「大丈夫、あなたが望む限りはそばに居続けましょう。もう勝手に居なくなったりしません。」
あなたが望むなら、共に過ごしてきたこの璃月でいつまでも——
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匿名 - 感動できる物語を読まさせていただきありがとうございます！！これからも応援しています！ (2022年6月14日 21時) (
レス) @page15 id: e82571c646 (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 続編おめでとうございます！最初から読ませて頂きました！更新頑張ってください！応援してます！ (2022年6月3日 22時) (レス) @page4 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりふき | 作成日時：2022年6月1日 19時
