捕獲 ページ26
息を整えつつ帰路を探していた私のすぐ背後から、突如として響く声。
吐息さえも触れる距離で響いたその声に、ほぼ反射で前へ飛び退き、勢いよく振り返ったその直後。
瞬く暇も無く迫ってきた声の主の両手によって、私の両手は冷たい壁に縫い付けられていた。
先程の安寧とは一転。突然がらりと変わったこの状況への焦りと混乱から四肢を駆使してもがいてみるが、私を押さえ付ける両手はピクリとも動きやしない。
彼等の中でも華奢な方なのに、何処からそんな力が出ているのか。
『......痛いぞ、シャオロン』
シャ「こうでもせんと逃げるやろ」
ギリギリと骨が軋む程に締め付けてくる、シャオロンの両手。私を閉じ込める琥珀の瞳は、先程とは一転。私が何を言おうが一切揺らがず、ただひたすらに涙と怒りを孕んでいる。
こんな顔にさせるつもりは無かった。彼等には、私に向けた嘲笑でも良いから、笑っていてほしいのに。
『.....逃がしてくれないのか？』
シャ「ｯふざけんな！ロボロからあんな話聞いて、逃がすわけないやろ！話そうとしてもずっと逃げるしｯ」
『シャオロン、落ち着いて聞いてくれ。
お前達に私を殺させたいのは山々だが、今の私はただの村娘。殺しでもしたら、お前達が国民に不信感を抱かれてしまう。憎い私のせいで愛すべき国民達からそんな風に思われるなんて、そんなの嫌だろう？』
さっきまで必死に走っていたからか、シャオロンは酷く冷静さを欠いている。もしかしたら、私を殺す事のデメリットを考えられてないのかもしれない。
そう思い、ゆっくり諭すようにシャオロンに言葉を紡ぐ。
これで分かってくれたか.....？と静かにシャオロンの返答を待つ事数秒。
シャ「は.....？何言っとんねんA」
怒りと涙で覆われていた琥珀が凄まじい怒気に塗り替えられ、背筋が凍る程の緊張感が、私を包み込んだ。
シャオロンがこんなに怒るのを見るのは、初めてかもしれない。
前世のシャオロンは、逆に皆を煽って怒らせる立場だったからな。
なんて少し驚いていると、シャオロンが鼻同士が当たりそうな程に顔を近付けてきた。
シャ「嘘やな？冗談やんな？」
『コネシマもそうだったが、何故冗談だと疑うんだ？そんなに信用出来ないなら、お前達の目の前で─』
シャ「何で.....何でやっと会えたと思っとった奴の口から、そんな事.....！」
〈シャオロン、落ち着け〉
シャオロンの衝撃発言に耳を疑った直後、何処からか響く怒りを含んだ低音が、鼓膜を揺らした。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
