脱出 ２ ページ20
この、男らしいけど小さい手。
１度聞いたら忘れられない、芯の通った声。
首に当たる、サラサラとしたくすぐったい感触。
『......ロボロ』
ロ「覚えててくれたん？」
『忘れるわけがないだろう。私の首までしか背がない奴は、私の知り合いに１人しかいない』
ロ「やかましいわ......」
彼等の中で、唯一私より背が低いロボロ。
それが小動物みたいで可愛くて可愛くて、ついからかってしまうのだ。
昔は、からかう度に声を張り上げて突っ掛かってきてくれたものだが......
やはり、私は相当嫌われているようだ。
分かってはいたが、こう目の当たりにしてしまうと......な。
『すまないが、離してくれないか？』
ロ「何で？」
『そろそろ帰らないと。村の皆が心配してしまう』
ロ「Aの家はここやろ？何で俺等より村の奴等を気に掛けるん？」
腰に回されている橙を掴んで引き剥がそうとするも、石のようにピクリとも動かない。
さらに、隙間が無いのではないかという程背中に密着してきて、私を殺す事への執念が伺える。
......そうまでして私を消したいか。仕方ないな。
弟のように可愛がっていたロボロに抱き付かれて嬉しくないわけがないが、ここで気を緩めてはいけない。
彼等に私を殺させるわけにはいかないのだから。
『私はもうA・ライターではない。A・ヴァーハイトだ。
ただの村娘を誘拐して処刑だなんて、お前達の評判が落ちるだけだぞ？』
ロ「え？」
お前達が私を殺したがってるのは知っているが、そんな憎い私のせいで自分達の人生が狂うのは嫌だろう？
そういう意味を込めてロボロに優しく説くと、すっとんきょうな声が背後から上がった。
その一瞬、ロボロの腕から力が抜け、張り詰めていた空気が糸が切れたように緩む。
このチャンスを逃してなるものか。
ロ「あっ！」
『安心しろロボロ！お前達の手を汚させなくとも、あの村に帰ったらこの命を絶とう！』
ロボロの腕を振り払い、急いで近くの窓を開け放つ。
私が逃げても、きっと彼等は私を見つけ出すだろう。
だから、何もしなくても直に私がこの世からいなくなる旨をロボロに伝える。
その時に、ヴァーハイトとして初めてロボロの顔を見た。
.....相変わらず、紙で綺麗な瞳が見えないな。
ロ「ま、待って！！」
懇願するような、すがり付くような、悲痛な声。
初めて聞くロボロのそんな声に驚きながらも、窓枠から外へと飛び出した。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
