贖罪 ページ15
あぁ。もしかして、私を油断させようとしているのか？
あの城が私の居場所だと錯覚させるような、甘い言葉で惑わして。
そんなに私を殺したかったんだな。
だが私は、国民と彼等の為に殺されるわけにはいかない。
彼等が私の死を望むのなら、自分の手でこの命を刈り取ろう。
それがせめてもの贖罪になるのなら。
『何故私を連れて行くんだ？
生憎だが、私はもう女王ではない。
国政もお前達で十分だし、ただの村娘である私が戻る理由はないはずだぞ？』
そう言って口角を上げると、私を見下ろす深緑とアメジストが、一瞬ギラリと狂気を孕んだ。
何だ、今のは。
知らない。前世の２人は、こんな顔を、こんな目をしなかった。
オ「.....A。前世の事について、色々話したい事があんねん」
兄「そうや。
俺なんか、国に帰った途端Aが死んだって聞かされて.......
何が何だか分からんかったわ。今もよう分からんねん」
『それはすまない。殺される事が分かった時に、手紙で伝えておけば良かった』
オ「は？」
『あ』
ドスの利いたオスマンの声に、「しまった」と口を閉ざす。
私は、自分が殺される事を知っていた。
だが、彼等には言わなかった。
あの頃も、彼等に迷惑を掛けないように必死だったから。
生まれ変わってからも、隠し通すつもりだった。
「前世で言ってくれれば、もっと早く女王即位の手続きが進められたのに」
彼等に、そう言われそうで。
なのに、このタイミングでバレるか。
......まあいい。もう過ぎた事だ。
２人にはもう帰ってもらおう。
そして、お互いの事はもう忘れよう。
『........気にしないでくれ。昔の話だ。
兄さん。諜報員としてのラインク村潜入、ご苦労様。
私がAである事が判明したし、もう帰るんだろう？お互いに、今までの事は忘れよう。
オスマンも、前世はすまなかったな。女王即位の手続きをしてなくて。しようと思ったんだが、間に合わなくてな.......
もう私の事は忘れて、幸せに暮らしてくれ。
これからも、我々国をどうかよろしくお願いしますね。オスマン様、兄さん様』
最後を敬語で締め括り、２人を言葉で突き放す。
すると、オスマンが私の両肩をガシリと掴み、よろよろとしゃがみ込んだ。
オ「.......無理」
『え？』
オ「無理や。無理やそんなの。Aを忘れるなんて無理や」
『オ、オスマン？』
どうしたんだ？と、オスマンの顔を覗き込もうとしたその時。
突然、グラリと世界が歪み始めた。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
