恐怖 2 ページ14
オスマンは熟考する私を、スッと細めた深緑で見つめている。
これはオスマンの昔からの癖で、気を許した相手を怒る時に、1度目を開いてから細めるのだ。
普段ふわふわして温厚なオスマンがこの癖をする時は、大体ガチ切れ中。
ガチ切れオスマンの達者な口と明晰な頭脳による精神攻撃は、この世で恐ろしいものトップ10に入る。
オ「.....忘れたんか?ほんまに」
『何をですか?
いえ、そんな事より、どうしてオスマン様がここに?忘れ物でもいたしましたか?』
オ「いや、忘れとるわけないよな。
俺等の前でだけ、喋り方変えるんやから」
ゆっくりこちらへ歩きながら、耳を疑うような言葉を連ねたオスマン。
一瞬意味が分からず、オスマンの瞳を見つめて固まってしまった。
『......どういう事ですか?』
今にも逃げ出したいのを我慢して、作り笑顔を貼り付けて問う。
オスマンはベッドに座る私の前に立つと、パチン、とその細い指を鳴らした。
すると家の扉が開かれ、そこからまたもやよく知った人物が、中に入ってきた。
『お、お兄さん........?』
兄「やっほ、A」
ここ数日、姿を見ていなかったお兄さん。
チョコレートのような茶髪をなびかせ、アメジストの瞳を愛しそうに細める彼は、やっぱりどう見ても「兄さん」そのもので。
でも、今度はあまり驚かなかった。
そればかりか、何処か諦めた自分がいた。
『......なるほどな。やっぱりお前が兄さんだったか』
兄「「やっぱり」って何やそれ。気付かんかったん?」
『そんな気はしていた。だが、記憶が無いのかと思ってな』
エリザベスを引っ込めて、怯え隠れていたAを引っ張り出す。
すると、オスマンの冷たかった瞳に、ほんの少しだけ情愛の色が灯った。
兄「あー。演技やよ、演技。君がほんまにAで、前世の記憶があるかどうか知る為の。
まあ、すぐに前世の記憶があるって事気付いたけどな。喋り方もそのまんまやし、俺の目見ぃひんし」
『........そうか。
それで、私がAだと知って、どうするつもりだ?』
お兄さんが「兄さん」だったという事実を知り、やっぱりなと息を吐いた。
そして、未だ私の前に立つオスマンに、私の処罰を聞く。
オ「勿論、城に連れて帰る」
返ってきたのは、半分予想していた答え。
だが、その答えに少し違和感を覚えた。
城に連れて「帰る」というのは、どういう事なんだ?
処刑や拷問目的なら、「連行する」とか言うはずなのに。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません! (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2019年10月26日 16時