城下町 ページ21
気配を消しながら芝生を走り、前世で教えてもらった抜け道を通り、城壁を越えてひた走る事数分。
徐々に人が増えていき、気が付けば城下町の大通りを走っていた。
男「らっしゃいらっしゃい！朝１番に捕れた新鮮な魚介だよ！」
女「パン焼きたてで〜す！今日は新作もありますよ〜！」
女「また東洋の珍しい服仕入れましたー！」
息を整えながら道の両脇に立ち並ぶ商店に目をやると、楽しそうに笑う国民達が客寄せをしているのが見えた。
行き交う人々もその声に応え、１人の通りすがりの男性がパン屋に入り、女性から焼きたてのパンを受け取って笑い合いながら店を出てくる。
この光景を見る事が私の夢であり、前世の楽しみだった。
ライターでなくなった今も、国民達のこの幸せそうな顔を見るのは好きだ。私達が起こした大改革は間違ってなかったのだと、改めて彼等の事を誇らしく思える。
もうこの町を去るのだから、最後にこの町に住む国民と少し話そうと、東洋の服を売りにしていた服屋に足を運んだ。
アメリカンな茶色い扉を押すと、チリンッと軽快な音が店内に響く。
すると、服の整理をしていた店員達がこちらに振り向き、にこやかな笑みを浮かべた。
女「いらっしゃいませ！」
男「いらっしゃいませー！」
女「......！！」
お決まりの台詞を放つ国民達の幸せそうな顔を見回した時、１人だけ様子がおかしい女性に気付く。
その女性は驚いた様子で私をじっと見つめ、口をあんぐりと開けてカタカタと肩を震わせていた。
『あの、どうかなさいましたか？』
女「！」
明らかに尋常ではない反応に、他の店員達よりも年が上に見えるその女性に近付いて声を掛ける。
すると、より見開かれた女性の瞳が、薄い水の膜に包まれて揺れ始めた。
『だ、大丈夫ですか？何処かお体の調子が─』
女「A様！！」
『え、？』
遂にはボロボロと泣き出した女性に突然名前を呼ばれ、喉から変な声が飛び出してしまった。
初対面の少女を見て女性が泣き出すという、端から見れば異様なこの光景に、他の店員達は訝しげにこちらの様子を伺っている。
ここで騒ぎを起こされると彼等にバレる可能性があるので、とりあえず女性を店の外へ移動させ、路地裏でゆっくり話を聞く事にした。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
