さて、【ロア】 ページ50
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「____貴女が、俺を呼んだのですか」
「......えぇ。はじめまして、帝さん」
顔を強張らせつつ、ロートの前に歩み出る帝。
それに、ロートはふわりと笑った。後ろに控えるもみの木に、パチパチと拍手を送る。
地面から鋏を引っこ抜き、「お話ししましょ」と笑うロートに、帝は近付いていく。
その足取りに迷いはなく、悠久古書店のものたちは作戦と違う、と慌てたような顔をした。
彼はそれに振り返ることもなく、ロートのすぐ近くに立つ。
「......万年筆は?」
「持ってきています」
そう言って、万年筆を取り出す。
―――その瞬間、彼の喉元には鋏の刃が当てられていた。
帝はさして驚く様子もなく、ロートを見据える。
ロートも、帝ににやりと笑いかけた。
「能力で物を出しなさい」
「............嫌だと言ったら?」
「貴方にそんな選択肢も、方法もないわ」
帝は大きく溜め息を吐く。
____そして、何も躊躇せずに鋏の刃を素手で掴んだ。
案の定切れ味の鋭いそれのせいで、掌からは血が滴る。
ロートは驚いたように目を見開いた。
帝はその隙を見逃さず、鋏ごとロートを持ち上げると、悠久古書店から離れた方に投げ飛ばす。
瞬間的に猫井が反応したが、帝はそれをすぐに抑えつけた。
____彼の戦い方はこんなのではない、と周りに動揺が走る。
それは敵味方同じようだった。
咄嗟に起き上がったロートも異変を感じ、能力を発動する。
猫井がそれに攻撃を繰り出すのはほぼ同時だった。
帝____らしき人物が飛び退くのと同時に、白い煙が立ち、たちまち帝の姿が消える。
「―――――いや、速ェだろォ......バレんの......ロートが居ちゃ俺の能力なんて無理だってェ......」
どうすんだよォ、と怠そうにもみの木を振り返ったのは、普段戦線になんて出てくることのない
ほほ引きこもりニート狼____ロアだった。
目の下に隈を作り、欠伸をしながら頭を掻いている。
先程までの帝はおろか、持っていた万年筆は木の枝に変わっている。
「本人なんて出すわけない」という意味と同時に、ロートの戦力を減らす作戦に出たか、と
ロアは味方ながらに感心する。
......と言っても、自分は唐突に帝に化けて外に行くよう言われただけ、なのだが。
ロアはまるで戦う気がないかのような顔をしている。
引き締まった場の空気など、気にしていなかった。
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あぷり(元はる櫻)(プロフ) - 続編で更新します (2017年12月16日 17時) (レス) id: 1e40ca4b4e (このIDを非表示/違反報告)
総悟13@サブ垢(プロフ) - 終わりました (2017年12月16日 14時) (レス) id: 296183b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13@サブ垢(プロフ) - 更新します (2017年12月16日 14時) (レス) id: 296183b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 総悟13@サブ垢さん» 遅くなってすみません、終わりました。 (2017年12月16日 13時) (レス) id: 0d08c1bb88 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - http://uranai.nosv.org/u.php/novel/e071ba2eb19/ 続編です。皆様の予約が終わり次第関連付けしますが、もし足りなくなった場合にはこちらに。 (2017年12月15日 19時) (レス) id: d43f25135a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨紗 x他15人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年12月3日 18時