こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ37)

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しけない【マッチ】ページ37

　……じんこう、しょーむ？

　どうやら自分たちの手で霧を消そう、という話らしいのです。わたしのかごに入れられる沢山のマッチ。いつも束にして持っていたので、箱型はあまり見慣れません。わたしは一つの箱を手に取り、まじまじと見つめました。

　――防水マッチ。水に濡れても火がつくマッチ。そんなものがあるとは思ってもいませんでした。日本は本当にすごいところです。お菓子も出てくるし暖かいところもあるし、水に濡れても火がつくマッチもあるだなんて。これをあの時に売れたのなら、きっといっぱい稼げたに違いありません。

「あ、ありがとう、ございます」

　ストーブの前に戻った獣耳の生えたおにーさんからは返事はありません。きっと寝てしまったのでしょう。

　……その作戦が却下され、シンデレラさんはさらに面白いことを言ってくれました。『ろうそくのロウを頭に塗っておきなさい』と。ちょっと試したくなります。

　作戦会議が終わってから、わたしは古書店さんにあったろうそくを使って、何本かマッチを加工してみました。
　洗面台、蛇口を捻ると透明な水がきらきらと落ちてきます。わたしは何本かマッチ棒を完全に濡らしました。これで、普通なら火がつかないはずです。別に獣耳のおにーさんやシンデレラさんを疑っているわけではないけれど、モノは試しです。

「えい」

　手のひらの中で大きくなる、冷えたマッチ。その木の棒の先には大きく灯った、明るく暖かい、橙色の光。

「ほんとに、ついた……」

　獣耳のおにーさんからもらった防水マッチも、シンデレラさんから教わったろうそくマッチも、どちらも火がつきます。ちょっと感激です。

　……大人を甘く見てはいけないこと、武器は忍ばせておくこと。これは大事です。あと、もっと笑顔も上手になれたらいいのに。
　洗面台の鏡に映るわたしの顔はぶすっとしていて、可愛くありません。あぁわたし、こんな顔していたんだ。これでは誰もマッチを買ってくれませんね。納得。いつも可愛いアリスちゃんが羨ましいです。
　ふぅとため息をついて、頬をふにふにと両手で回しました。前よりも随分ふっくらしたような気がします。――太ったのでは。……しばらくお菓子は控えなければいけません。

　今日は作戦が始まるまで、ひたすらマッチにろうを塗ることにしました。細かい作業は嫌いじゃないので、いい時間潰しにもなるでしょう。

　窓の外、霧はすぐそこまで訪れていました。