こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ24)

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想いと願い【帝】ページ24

秒針は規則正しくカチ、カチと音をたてている。帝の部屋の壁に掛けられている時計が指す時刻は午前６時。帝が起きるには早すぎる時間だ。

帝は、いつもの笑顔を置き去りにして、物思いに耽っていた。

とうとう、“かぐや姫”＿＿“竹取物語”の原本が解放されてしまったのだ。

帝はそもそも、タチアオイ出版が嫌いではなかった。立場上、敵対関係に位置するだけで、改変を望むのは個々の自由だと考えているからだ。ただ、竹取物語に関しては少し違った。

物語の中では“帝”として、権力があった。それ故に、女たちが“帝自身”ではなく、“権力”を目的に近付いてきた。嫌になった。自身を見てくれない女など、視界に入れたくなかった。でも、彼女＿＿かぐや姫だけは違った。求婚して、断られることなんてないだろうと思われたのに、いや、自分も思っていたが、あっさりと断られた。

それが、彼＿＿帝にとっては、嬉しかった。初めて、“権力”を見ないでくれた、それが帝にとっては嬉しくてたまらなかった。

それからは、彼女の幸せだけを願った。あわよくば、なんてことも考えたが、手紙をやり取りしている関係が続くと、それすらどうでもよくなってしまった。

そしてとうとう、彼女が月に帰ってしまった。彼女は綺麗な顔を歪めて、悲しそうに帰っていった。翁も、お婆さんも、勿論自身も悲しかった。でも、彼女に貰った手紙と薬はどうしても、受けとれきれなかった。いつまでも、自身の中で、彼女の顔が思い浮かんで、辛かった。だから、使者に頼んで燃やして貰ったというのに。彼女は改変を＿＿この世に留まりたいと願った。

「…彼女が留まったら？俺は辛いまま？結ばれたとして、俺は彼女に何をできる…？」

ただ、彼女には、“権力をもった帝”を断ってくれた、恋を教えてくれた彼女には、良い人を見つけて、幸せになってほしい。

ただ、それだけ。

こんな想いを誰かに打ち明けたくなって、親友＿＿ノアの部屋の扉をノックするべく、帝は腰掛けていたベッドから立ち上がった。