こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ12)

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嗚呼、何と怨めしき【八岐大蛇】ページ12

俺は、何とも不愉快な思いをしていると同時に、こいつを阿呆だと思う。

俺は、この霧だらけの町でも難なく進める。

僅かな地面の振動で誰がどこにいるかも、俺の居る所も分かる。

蛇の俺に視界の不利な所などないのだ。

だが、こいつは普通の、つまり人間に酷似したリィンだろう。

特殊な能力はあるだろうが、其れが視界を良くする物とは思えない。

視界を良くだけする能力なら、俺が簡単に捻り潰せる。

俺も戦闘向きだと言う自覚はある。

視界が悪い中、戦闘員を寄越してもそっちが不利になるだけだ。

非戦闘員なら、なおさらそんな奴を寄越すだろうか？俺の所に。

うーん、どうしようか。相手を見極めるのも大切だと誰かが言っていた気がする。

言っていた気がする。

……あ、ていうか俺が本来の姿に戻れば解決じゃねーか？

八つの頭に八つの尾。巨大な身体は全てを砕いて暴れまわる。

うん、ぶっちゃけ俺もその間の事は覚えてないし、こいつらを殺すのはルール違反だ。

俺が本来の姿に戻る選択肢はなくなったな。

どうしたものか。殺す訳にはいかないし、酒は出来れば飲みたくない。

俺の能力は大分殺人向きだなァ。本性故にしょうがないのだが。

唸っていると、男はあろうことか。

改変する理由を聞いて来た。

……は？

「……」

偽りの正義が気に食わなかったから、作者が悪役に仕立てたから。

ああ、そうだ。俺は全てが気に食わない。

「ああそうだ！俺は全てが気に食わない！恨めしい！

嗚呼恨めしき彼の神よ！俺を畜生に落とし何を得た！すべて独善的なハッピーエンド！

俺が事実を変えるのは同胞が為！原本の中で苦しみもがくオリジナルの為！」

俺は咆える様に叫ぶ。霧に隠れた空に猛り咆える。

天から落ちて射干玉(ぬばたま)の中を這いずり、畜生と罵られるのはもう沢山だ。

見せしめの為だけに殺められた俺の気も知らず、天で嘲り笑う奴らを切り裂く為に俺は生きる。

こいつらにはそういう気持ちは分からないのだろう。

何処まで行っても善人。己の不幸も、幸せになり不幸にもがく者に心を痛める奴らには。

身が張り裂ける程の悲しみと怨み、其れを晴らす為に成し遂げんとする復讐、目的。

俺は、俺達は、バッドエンドの住人は、それ以外を糧に生きる方法を知らない。

畜生と出来損ないしか行かぬ射干玉の闇の中でも光を見出す奴らには、

その闇に縋り生きる他無い奴らの気持ちなど、分かる筈もない。