四季紡ぎ。 (ページ10)

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変わることのない誓【夕暮暖】ページ10

「夏班班長、早川綾音からのお知らせでーす。これより、『初雪奪還戦』を行います――」

聞き覚えのある声が聞こえた
概要は、今から初陣が始まるとのこと

俺は一時間ほど、動きが止まる事がなかったダンベルを乱雑に机の上に置いた
ガタン、と机がへこんでしまうのではないかと思ってしまうほどの音を立てながら

椅子に掛けていた自分の髪色と同じ色をしている上着を羽織る

お世辞にも綺麗とは言えない自分の寮の部屋の床には、膨大な量の筋トレ道具が散らばっていた
そんな道具達を、邪魔だと言わんばかりに蹴りながら外へ出た

人気(ひとけ)のない廊下を見渡す
さっき足音やドアが開く音が聞こえていたので、きっともう他の四季紡ぎ達は転移所へ向かったのだろう
早く行かないと置いて行かれるかもしれない
速足気味で俺は転移所へ向かい始めた

季節を奪い返すために行われる、初めての季節奪還戦

初めてだから何をしたらいいか、と言う事を考える必要は俺にはなかった

ただ、俺は皆を守ればいいだけなのだ

何も考えずに転移所まで歩いていると、ピアノの音が聞こえたのでつい足を止めてしまう。この演奏者は･･････きっと月ヶ瀬だろう

微かにだが聞こえたそのピアノの音色は透き通っていて、迫力があって――どこか、中学二年生の時に見た『季節』を思い出させてくれるようなものだった

そうだ、今日からは守るだけでは駄目だったのだ

『季節』を取り戻さなければ

そして皆の大切なものも取り戻さなければ

取り戻した後には、俺は全てを守らなければならないんだ

絶対にあの日のような…血に染まり、人に絶望を感じさせるようなことは、少なくとも俺の前ではもう起こさせないと

そう誓ったから

だから俺は『守る』

例え何があろうとも、必ずチームを、仲間を守り続けて見せる

丁度ピアノの音が聞こえなくなった

深呼吸をし、拳を強く握りしめると俺は転移所へ走りだした