戦えなくとも【早川綾音】 ページ43
まずいまずいまずいまずい。
指示を出さなきゃいけない、なんてことくらい分かってる。
それでも能力が発動できない。──ううん、正確に言えば声が出ない。何も思いつかない。
全ての現状が把握出来ているのは、本部にいる私だけなのに。
次から次へと画面上から消えて行く丸……すなわち、四季紡ぎたちの場所を表すマーク。
頭よ回れ、と強く頬を叩いてみるが、私の頭は壊れたテレビでもないので欠片も打開案は思い浮かばない。
誰か助けて、と控えている政府の人達を見ても知らんぷり──誰かが洩らしていた「政府の人々は信頼できない」という言葉が分かる気がする。
しかし「頼れる人はいない」そう改めて感じてみると、すう、と頭が冷えていく感じがした。
もう一度現状把握を、と改めて画面を見つめる。
するとどうだ、確かに点は減っているが、破壊者の位置を表す四角のマークもかなり減っている。
規則性が見えてきた。「ある場所」を中心に放射状の配置。なら、ここが発生地と見てもいいのかも。
だとしても、指示を出すには確信が欲しい。何か。何か──。
祈るように画面を見ていると、所々にて丸を中心として四角が一挙に消える。
誰かと確認すれば、日織ちゃんだ。しかし、それで破壊者に場所を認知されたのか、より多くの四角が押し寄せている。
──恋愛もまだの彼女に、火傷あとをつけるわけにはいかない。
次いで月ヶ瀬さん、天理さん、沙緒里ちゃん、手毬咲さん──。
負けてらんない。私には、戦えなくとも……。
来た。発生地と目星を付けていた場所から、一斉に「四角」が飛び出す。
しかも、その場所には丸が。いる。信頼できる仲間がいる。きっと十分発生地を防げるほどに。
すう、と大きく息を吸い込んだ。ここからでも声は飛ばせるくらいの能力が私にはある。
そう、戦えなくとも。
「ねえ、近くに地獄の入口みたいな赤い穴ない? ──さんたち。そこ、潰して。破壊者が出てきたときに、その場で一網打尽にして。破壊者の死骸で埋めてやるの、穴を」
……我ながら、かなりえげつない戦法だ。
あまり大きい声で言うと混乱させそうだから、その人たちだけに聴こえるように。
私には戦えなくとも、意地がある。
そして、信頼できる仲間がいる。
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魁來。(プロフ) - 終了しました (2017年12月1日 6時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
魁來。(プロフ) - 更新します (2017年12月1日 6時) (レス) id: dc73ea1538 (このIDを非表示/違反報告)
トウキビ(プロフ) - 更新しました (2017年11月25日 19時) (レス) id: 897976709d (このIDを非表示/違反報告)
トウキビ(プロフ) - 更新します (2017年11月25日 19時) (レス) id: 897976709d (このIDを非表示/違反報告)
フリダ‐(プロフ) - 更新終わりました。 (2017年11月24日 19時) (レス) id: f3285e7d53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:四季紡ぎ。作成メンバー x他9人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月12日 22時