7話 桂視点 ページ8
*
A殿が作った品々は、どれも美味かった。勿論、米の一粒も残さずにきっちりと完食した。やはり、人が誰かの為に作った手料理は腹だけでなく心も満足するものだ。
彼女が調理の過程に使った器具と食器を洗うと言うので、「申し訳ないから座っててほしい」という反論を押し退けて一緒に食器洗いをした。美味い飯を食べさせてもらっておいて、働いているのを尻目にぐうたらする訳にもいかないからな。
朝からだいぶ色の濃い出来事だったが、まだ午前9時半。テレビでは、いつもの朝のニュース番組で今日の天気予報のコーナーを放送している頃だろう。
『桂さん、エリーさん、昨夜はありがとうございました』
「何の、あれくらいどうって事ない。こちらこそ、美味い飯をありがとう」
『いえ……そんな。そろそろお暇します。お世話になりました』
そう言って立ち上がろうとした彼女だったが、微笑みを浮かべていた顔がまたみるみる暗い表情になった。
……あぁ、そうか。旦那の事だ。金はあると言っていたものの、いずれかは家に帰らなければならない。そうすると、嫌でも旦那の事を考えさせられる環境にまた閉じ込められる。
俯き、右手が左の着物の袖をぎゅっと握り締めている。……情緒不安定な時の癖なのだろうか。
『すみません。すぐに出ていきますから』
「待て。……本当は帰りたくないんだろう?」
そう言うと、こくりと一つ頷いた。それは、無言の訴えだった。
──……。
「……気が済むまでここにいるか、それとも諦めて家に帰るか……どうする」
『え……いても良いのですか?』
「俺は構わん。だが忠告代わりに言っておこう。俺は攘夷志士だ。攘夷志士はこの国では犯罪者……警察にも追われるし、敵も多い。安らかな時間は約束出来んぞ」
警察、思想の違う党派の攘夷志士、一般市民。四面楚歌と言っても過言ではない。
そんな環境に身を置くという事は、捕まったり、最悪死ぬ事だってある。そんな危機に常にさいなまれる事となるのだ。
自分の身を按ずるのであれば、俺達とはここでおさらばだが──彼女の答えは。
『……貴方がそう仰って下さるのなら、お傍にいさせて下さい。貴方は恩人、私は貴方に従います。何なりとお使い下さいませ』
膝を折って床につき、三つ指を添えて静かに頭を下げた。……何か勘違いをしているようだが、こき使ったり扱いを雑にする気は毛頭ない。
──こうして彼女を、加茂A殿を受け入れた。
107人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
【銀魂 夢小説】訳アリ人妻は拾われる。参【桂小太郎寄り・微逆ハー】
【短編集】恋のうたを聞きながら vol.2【ジョジョの奇妙な冒険】
もっと見る
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
復活のU(うp主)(プロフ) - これ桂さんオチの夢小説だけど、他キャラとの裏短編集とか作りたいとかぼちぼち思ってます。決して上手くはないんだけど、助平だから裏要素満点なの書きたくなっちゃう。 (2017年8月31日 23時) (レス) id: c4fae3913d (このIDを非表示/違反報告)
復活のU(うp主)(プロフ) - セルフツッコミしてしまいますが、春雨初登場時ってエリザベスいなかった気がする……ご都合主義という事で、多少の原作との食い違いなどはスルーして下さると嬉しいです(汗)これからもよろしくお願い致します。 (2017年8月28日 14時) (レス) id: c4fae3913d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:うp主@
作成日時:2017年8月19日 23時