2話 桂視点 ページ3
『元々恋愛結婚じゃないから、多少は仕方ないとは思ったんです。でも、碌に家に帰ってこないし、お財布は旦那が管理しているから金銭的束縛もあるし、家で見覚えのない私物が見つかったり……私、何で結婚したんだろうって』
着物の裾をぎゅっと握り締め、俯く。静かに嗚咽が聞こえる事から、涙を必死に堪えているのが分かった。
こんな
『……っごめんなさい、こんな湿気た話をしてしまって。貴方のお蕎麦、伸びちゃったかも』
蕎麦? ああそうだ、頼んでいたのをすっかり忘れていた。
きっと話し込んでいるのを見て、店員も気を遣ってくれたのだろうか。どうやらエリザベスは既に食べ終えたらしい。
「気にしなくていい」と女に言い、少し汁を吸って伸び掛けの蕎麦を頂く。汁気で食感はあまり良くないが、味に支障はないから平気だな。
そこまで多い量でもなかったからか、5分くらいでぺろりと平らげた。割り箸を置き、「ご馳走様」の意を込めて手を合わせた。
「……で、今日はどうするつもりなんだ」
『多分、その辺のネットカフェとかで寝泊まりすると思います。幸い、明日までふらふら出来るお金はあるので』
赤の他人と言えど、ここまで個人の事情を聞いておいて放るのも良心の呵責にさいなまれる。それに、これらの事情抜きにしても、女を一人夜の街に放すのは危ない。
天人や他の攘夷志士もいるだろうしな……俺達は俗に言う“穏健派”だからマシだが、もし過激派の連中と遭遇したらただでは済まないだろう。女子供でも、最悪の場合殺される。
……仕方あるまい。かくなる上は。
「今夜だけなら、俺の家に泊めてやろうか」
『え……そんな、悪いです。お気持ちだけで十分ですよ、お話も聞いて下さりましたし』
「夜の歌舞伎町は危険だ。天人や攘夷志士共に遭遇したらどうする、最悪殺されてしまうぞ」
『っ……』
想像して怖気づいたのか、更にしゅんと委縮した。どうするか考えているであろう女の答えを、俺は黙って待つ。
──少し考え込んだ後、顔を上げて「お言葉に甘えます」と、小さくか細く言った。
さて、決まったな。そうとなれば、家……いや、拠点へ連れて帰らねば。酒が入って千鳥足の女に肩を貸す。
お代をカウンターに置いて、店を出た。勿論、酒代もな。
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復活のU(うp主)(プロフ) - これ桂さんオチの夢小説だけど、他キャラとの裏短編集とか作りたいとかぼちぼち思ってます。決して上手くはないんだけど、助平だから裏要素満点なの書きたくなっちゃう。 (2017年8月31日 23時) (レス) id: c4fae3913d (このIDを非表示/違反報告)
復活のU(うp主)(プロフ) - セルフツッコミしてしまいますが、春雨初登場時ってエリザベスいなかった気がする……ご都合主義という事で、多少の原作との食い違いなどはスルーして下さると嬉しいです(汗)これからもよろしくお願い致します。 (2017年8月28日 14時) (レス) id: c4fae3913d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うp主@
作成日時:2017年8月19日 23時