1話─出逢い─ 桂視点 ページ2
「さて、エリザベス。今日もご苦労だった。夕飯にしようか」
今日も大した事はなく、無事に真選組からも逃げ切れた。共に頑張ってくれたエリザベスを引き連れ、蕎麦屋の暖簾を潜る。
中年の店主の声に一つ会釈をし、カウンター前の席にエリザベスと並んで座った。
「エリザベス、何が食べたい」
「[かけ蕎麦が良いです、桂さん]」
「そうか、では俺もかけ蕎麦にするかな。かけ蕎麦二つ頼む」
店員に頼むと「はいよ!」と声を張り上げた。朝から夜遅くまで仕事していただろうに、疲れた様子一つ見せない。ここの店主の方針が余程良いのだろうか。
注文品が出来るまでの間、おしぼりで手を拭いたり、壁に貼ってある広告を無駄に見たりしてみる。
こんな些細な事でも、生きている実感が湧く。俺はただでさ幕府の連中から目を付けられているからな……明日なぞ保証出来ない身だ。
『すみません、焼酎もう一つ下さい……』
「ちょいとお客さん、もう真っ赤じゃないか。これ以上飲んだら帰れなくなるよ」
『いいんです、どうせ今日は帰るつもり……ぅくっ、ありませんから……』
店員の困ったような声と、呂律も声帯も不安定なふらついた声。そんなやり取りが、俺の左隣から聞こえた。
何となく気になって、視線を向ける。俺の隣の隣の席、つまり一つ隣の席。そこに宵闇のような深い蒼の髪の女が、数本の焼酎瓶に囲まれて突っ伏していた。
「……ご婦人よ、あまり飲んでは体に障るぞ」
『いいの……ひっく、どうせ心配してくれる人なんていませんから』
「良かったら、何があったのか話してくれないか」
あまりにも廃れ果てた様子に、無意識に同情し、良心が働いたのかもしれない。俺の言葉に、女はむくりと体を起こした。
──美しい。赤く染まった頬、愁いを含む潤んだ瞳。今にも言葉がこぼれそうなのを必死に紡いでいる口元。実に扇情的だった。
心臓が一瞬どきりと大きく跳ね、以前より活発に動いているのを感じる。
『……長話になってしますが。私、3年前に結婚したんです……でも、結婚してから1ヶ月くらいで、旦那の態度が冷たくなってしまって。日に日に家を空ける時間も長くなっているんです』
なんと……人妻であったか。確かに左手の薬指に、指輪がきらりと光っている。「結婚は人生の墓場」などと言うが、強ち間違っていないのだな。
同じ状況下に置かれた試しがないゆえ、反応に困りただ黙って女の話を聞く。女は、更に話を続けた。
107人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
【銀魂 夢小説】訳アリ人妻は拾われる。参【桂小太郎寄り・微逆ハー】
【短編集】恋のうたを聞きながら vol.2【ジョジョの奇妙な冒険】
もっと見る
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
復活のU(うp主)(プロフ) - これ桂さんオチの夢小説だけど、他キャラとの裏短編集とか作りたいとかぼちぼち思ってます。決して上手くはないんだけど、助平だから裏要素満点なの書きたくなっちゃう。 (2017年8月31日 23時) (レス) id: c4fae3913d (このIDを非表示/違反報告)
復活のU(うp主)(プロフ) - セルフツッコミしてしまいますが、春雨初登場時ってエリザベスいなかった気がする……ご都合主義という事で、多少の原作との食い違いなどはスルーして下さると嬉しいです(汗)これからもよろしくお願い致します。 (2017年8月28日 14時) (レス) id: c4fae3913d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:うp主@
作成日時:2017年8月19日 23時