Psycho (ページ38)

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G線上の彼女 2 ページ38

「モブ茂、大丈夫？」

その女は影山が寝ているベンチの横にしゃがむと、両手を顎にあてそう聞いた

(歳は二十歳前後か…)

天牙さんが惚れるのもわからないこともない
なぜならそれくらいの歳の女というのは俺達中学生からすれば憧れの存在であるからだ

「大丈夫…です…」

「大丈夫ですよー」

影山の声をかき消すかのようにゲームの女が言う

「モブくんいつも貧血で倒れてますから
…えとー…」

「彼女は影山のお姉さんだ」

「モブくんのお姉さん」

途中、武蔵部長の助言が入った
…こんな事実をあの人が聞き逃すはずがない

「か、かかかか影山のお姉さんだとーーー！！！！？？？」

(やっぱり…)

天牙さんはずっと影山のお姉さんを幽霊か何か信じられないものを見るような目で見ていたが、この事実を知るとすぐそう叫んだ

ちょっと前おとりにしたやつの家族だったのだ
やはり当人にすればショックな事実であろう

「あー！キミは」

あの時の、と影山のお姉さんが言うと天牙さんは裏返った声で「は、はい！」と返事をした

「…ほう、まさか鬼瓦の好きな女性が影山のお姉さ「うわあああああああああああああーーー！！！！！」

武蔵部長がとんでもないことを口走りかけた途中、天牙さんは叫びながら影山のお姉さんから隠すように武蔵部長の前に両手をバタバタさせながら踊り出た

もしかするとこれはさっそくばれてしまったのでは、と本人の方を見ると
頭の上に？を浮かばせふたりのやり取りを見ていたのでセーフだったと思われる

「影山のお姉さんはなんて名前なんですか？」

ゲームをしていたひとりがふと思い立ったように聞いた

その瞬間、天牙さんは武蔵部長に小声で何か耳打つのをやめて
待ってましたという顔で影山のお姉さんの方を振り向いた

「ん？Aよ、A
私影山Aっていうの」

「Aさんかー…」と天牙さんはだらしなく顔を緩める

「あの…僕もう大丈夫なんで、もう行きましょう？A…姉…さん」

影山がのそりと起き上がり荷物をまとめ始めた

「では、私達はこれで」
「お疲れ様です」

手を降る影山と影山のお姉さん…もとい、Aさんに軽く手を降り返す
天牙さんに至っては涙目になっている

部室のドアがぴしゃりと閉まり
ふたりが去ったあとの部室にはしん、と静けさだけが残った

「あの、Aさん
どうして今日は僕の姉だなんて名乗ったんですか？」
「学校に入る許可書をもらいやすくするためよ」
「あ、なるほど…」