傷は癒えないけれど ページ27
―――2007年12月
your mind
色々ありすぎた。
１冊の本が出来上がるくらい。
どうか嘘であってほしいと何度も思った。
でも、現実なのだ。
あれから先生は口調も一人称も変わり、以前にも増して掴みどころのない性格になったように思う。
傑さんの影響は、それほどにも大きいものだったのだ。
けれど、私の様子を見に来てくれたり、修行をつけてくれるのは相変わらずで。
私はその日がいつも楽しみだった。
「えーっと…？」
五条「伏黒恵くんでーす！ほら、挨拶」
伏黒「どーも」
いつものように突然連絡が来たので、ご飯にでも連れてってくれるのかと思いきや、指定された場所は修行をするような空き地だった。
そして、そこには見覚えのない男の子が１人。
何歳くらいだろう。私より結構下な気がする。
五条「恵、僕がよく話してるのはこの子ね。祇園Aちゃん。この子も呪術師だから、恵の先輩だよ」
伏黒「はぁ」
「…？？？」
お世辞にも愛想が良いとは言えないその子を見て、私は戸惑っていた。
何が目的で会わせたのだろう、と。
五条「聞いてよA〜。恵さぁ、そこそこ強いからって『呪霊を１人で祓いに行く』って言うんだよ」
「え、と…そうなんですか」
五条「それでね？恵には現実を分からせてあげようと思って」
「現実？」
伏黒「まさかこの人と戦えって言うんですか、全然強そうじゃないけど」
五条「恵がAに勝ったら、1人前の呪術師として認めるし、それに見合った給料も払うよ」
なんだか勝手に物事が進んでいてまだ困惑しているけれど、先生はこの子と私を戦わせたいらしい。
チラ、と先生を見ると、満遍の笑みでニコッと笑っている。
……。
五条「後で説明するから！じゃ、スタート！」
「雑すぎますよ…」
五条「あ！あとAは術式使っちゃダメね。体術のみ。恵はなんでもアリだよ〜！」
伏黒「…ナメてるな」
先生は楽しそうに手をパンッと叩いて、開始の合図をした。
突然呼び出され、突然戦えと言われる私の身にもなってほしい、けれど何も考え無しということは流石にないだろうと、私は恵くんの攻撃に構えた。
…そもそも恵くんがどんな術式なのかも知らないし、どれほどの体術を使えるかもわからないので、先生相手に戦うと想定して。
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作者名：佐々 | 作成日時：2021年1月20日 13時
