たとえ向いてる方向が違っても【緑】

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緑 side


こだわりが強い俺は、譲れへんモンも沢山あって、

ついムキになってしまうことも少なくなくて。



やば、今のちょっと言い過ぎたな。


って思うことは何度もあった。




だから、


「ほんっまに、頭おかしいんちゃう！？」


と言ってしまった後に、しまったと思って


「あっ、ごめん、言い過ぎた……」


後から謝ることもしばしば。





あの夜、仕事で上手く行かんくてヤケクソになりながらガバガバとお酒を飲んでた。


Aが飲みすぎだよと止めてくれていたけど、

死ぬほどストレス溜まっとった俺は、Aの忠告も聞かんと飲み続けた。



そっから全然記憶なくて、



やから、

またAにキツくあたってもうたことも、

「出てけ」とか言うたことも、


全く覚えてへんくて……




ヤケ酒した翌日もAの態度は至って変わらへんから、油断しきってた。




ある日帰ったら家ん中からAの私物が消えてて、

は？と思いつつ電話したら無機質な機械音が流れるだけ。


同棲する前にAが住んでた家に行ってみたけどもぬけの殻。



何の手掛かりも残さんとおらんくなった。





多分自惚れではなく、俺もAも、満たされるくらい幸せな生活を送ってた中で、

彼女が少しずつ溜めてた負の感情を、

俺は思いやることができひんかったんや……








「――Aの本音、ちゃんと聞かせて……？」



俺の物が何一つ見当たらないAの新しい家に上げてもらって、

Aが淹れてくれたコーヒー飲みながら、俺はそう切り出した。




Aは、ずっと自分のスカートを握り締めながら俯いてた。


恐る恐るその顔を覗き込んだら、むぎゅっと声が漏れるくらい頬を掴まれて避けられて、


改めてその顔を見れば、眉間に皺を寄せ、目に水分溜め込んでた。






「――あたしはッ！



シチューはビーフシチュー派だし！


ラーメンは固めが好きだし！


仕事で急遽残業することもあるし！


トイレにパンツ脱ぎ捨ててたのは悪かったけど…


でもお風呂はゆっくり浸かりたいし！


ベロベロに酔っ払った忠義はあんまり見たくないし……」




勢い任せに飛び出したAの言葉の数々は、どれも身に覚えがあって、


やっぱ好みはちゃうんやなぁと思いつつ、



俺の好みを押し付けてた申し訳なさと、


あたりがきつかったことへのゴメンの気持ちと、





ついでに、





めっちゃ好きって気持ちを込めて、





その唇に思い切り自分の唇を重ねた。

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