たとえ向いてる方向が違っても【緑】

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あたしの片想いが決して報われない原因であるヨシコに醜い嫉妬をしたことは数えきれない。





わざわざあたしの誕生日を祝うために仕事終わりに忠義が家に来てくれた時、

忠義は何とも高そうなネックレスと香水をプレゼントしてくれた。



好きな人からのプレゼントに鼻の下を伸ばしながら喜んでいると、

忠義の傍にもう一つ袋があることに気付く。



生憎その袋は透明になっていて、中身がモロに見える。



スカート……



どう考えてもあたしへのプレゼント…じゃないよね。




あたしのその視線に気付いたのか、忠義は


「あっ、ごめんこれAのとちゃうで？
ヨシコももうすぐ誕生日やねん、やからこれヨシコへのプレゼント」


気持ちいいくらいにからっと笑ってそう返された。




が、あたしは当然笑ってられない。


女友達、しかも自分に気がある女の誕生日祝いに他の女(本命)へのプレゼントを持ってくるなんて、デリカシーがないにも程があるぞ！



…と言っても忠義はあたしの気持ちに気付いてる筈もないのだけど。




あの時は、相当ヨシコを恨んだっけ。





あとはそうだ、あたしの家で宅飲みしてた時に忠義の携帯に電話が来て、


「もしもし？……は？何してんねん彼奴…
分かった、今から行くわ」


という会話をしたと思ったら、


「ごめんっ、や、ヨシコの友達が、ヨシコが飲んでベロベロになって家が分からん言うからタクシーで送ってくるわ。
また来るな！」


バタバタとあたしの家を出て行ってしまった。





そりゃあ、好きな子のヘルプを要請されたら飛んで行くのは当たり前だろうけどさ。


でも、一緒に楽しく飲んでたあたしを差し置いて、呼ばれたらほんの僅かの迷いも名残惜しさも見せず去って行ったことに醜い感情が生まれてしまったあたしを、どうか許して欲しい。







――そう、ヨシコの存在さえ知らなければ、

あたしは少なからず期待を滲ませた片想いをしていた筈なのだ。


片想いは、好きな人の一挙手一投足への期待や嫉妬で、感情が忙しなく左右されるのが醍醐味だろう。




だが、あたしの場合は。


好きな人に好きな人がいることが分かってる。



そうしたら、あたしに残るのは、

ドキドキとか、期待とか、片想いらしい甘酸っぱくて少し苦いような気持ちではなく

妬み・嫉み・自分への嫌悪感という醜い気持ちばかりだ。



それでもどうしようもなくあいつが好きだから、

厄介なんだ。



せめて潔く諦められたらいいのに。

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