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椅子に腰を下ろすと丁度震えた携帯。
『今日Aん家行ってええ?』
それだけであたしの仕事のモチベーションは右肩上がりになって、
マッハで仕事を片付け、定時になる頃には綺麗になっているデスクにあたしは相変わらずだな、と溜息をついた。
「今日は鍋やでっ!」
買い物袋を下げてあたしの部屋に現れた忠義は、今日もまるで自分の家かのようにズカズカと入ってきて、キッチンに立った。
鼻歌を歌いながら野菜を刻むその後ろ姿に、
"――やっぱ、2年は強いな…"
そんなことを考える。
『この前のお詫びに、飯作ります!
家行ってええ?』
初めて忠義を家に泊めた日、連絡先を交換してと言われた時はとにかく驚いた。
そしてその数日後に、そんな連絡が来た時は、もっと驚いた。
あたしは既に、忠義が今をときめくアイドルだと言うことに気付いていたし、
何かの偶然だろうしもう会うことはないと思っていたから、まさかあんな形でまた会うことになろうとは思っていなかった。
「美味しいっ!」
見た目も味も完璧だった忠義の料理に、あたしの目は多分かなり輝いていた。
「せやろっ!」
忠義が嬉しそうに目を細めたあの時から、おそらくあたし達は意気投合していたんだろう。
アイドルとOL、違和感しかないその状況に自然と馴染んでいったのも、あたし達が気が合ったせいだ。
そうして、忠義を好きになるのも自然な流れだった。
アイドルに恋をするなんて馬鹿馬鹿しいと思ったけれど、それを忘れさせるくらい忠義は人懐こく接してくれるから、
"アイドル"という要素はあたしのコイゴコロをストップする要因にはならなかった。
むしろ、
「Aと飲むん、ほんま楽しいねん」
「ほな次は焼肉行こな?」
「忙しい時はほんま、無理したらあかんで?」
忠義から投下される言葉や優しさに、
週一か隔週の頻度で誘われる飲み会に、
自惚れや期待まで感じるようになってしまった。
――ヨシコの存在を知るまでは。
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渡璃凛(プロフ) - 雨さん» 細かいところは私のこだわりというかスタイルなので気にしないで頂きたいです。イモるというのは物怖じするとかビビるという意味です。続編は今のところ考えていませんがまたいつか機会があれば書かせていただきます。 (2021年3月1日 13時) (レス) id: ca2c84b988 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 何度も続けてのコメントですみません。 続きがあるなら39からとかでも良かったのでは?と 思ってしまって。。。 何かすみません(>_<) (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - またまた続けてのコメントですみません...。 最後に一つだけ気になったことがあるのですが。。。 物語38の後にお礼とお知らせ■作者よりの後も物語は 続きますが...。 何故そこでは物語の各題名に数字とか何も無く・だけ なんでしょうか? (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - また続けてのコメントですみません。。。 物語読みました。 物語は完結してしまいましたが...。 その後の2人が気になります。 (2021年3月1日 1時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 続けてのコメントですみません(>_<) 物語読んでいて一つお聞きしたいことがあるのですが...。 ・ページ47のここの部分 自分で探そうにもいざ会ったら絶対イモるやろうから〜 この絶対イモるやろうから〜のイモるとはどういう意味なんでしょうか? (2021年3月1日 0時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渡璃凛 | 作成日時:2020年10月8日 17時