女王蜂

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好きってなんだっけ。
異性にドキドキしたらそれは恋なんだっけ。
でも、恋愛感情なくったってドキドキすることとか、かっこいいなぁとか思うことあるし…



ていうか、会ったばっかの人好きになるとかありえなく無い？




「ねぇ、Aさん。聞いてる？」
「んわ！！」




目の前にはまんまるの瞳を見開いた彼がいた。
飛び退く私をみて、有岡くんは大笑いをする。


「Aさん、初めと雰囲気全然違うね。」

『有岡さんだって、敬語抜けてますよ。』

「いや〜うちに泊まった仲だしさ。」

『ちょ、聞かれたら誤解されますよ！一応あなた芸能人じゃないですか！』




━━━━━━
彼と初めて会ったこの場所で、私達は3度目の再開を果たしていた。
ただ、あの時と違っているのは、彼に少し酔いがまわっているということ。


「別に大丈夫だよ〜、ここ来る人は口が堅いからさ。」

『人を信じすぎると痛い目みますよ。』

「Aさんはもう少し人を信じた方がいいとおもうけどね〜」



前より気が抜けているような彼を前に、なんだかいつもより鼓動が早くなるのを感じる。

もう、引き返せないところまで来てるなぁ。
恋愛感情を持った所で、彼には好きな人がいるというのに。







「真奈、来ないね。」





零れたようなその言葉に、私は沈黙で答えた。


彼は真奈を待っている。
来ないであろう、彼女を。
かれこれ2時間はこうして二人で呑んでいるのに。




有岡くんはというとお酒のまわりが早かったのか、ついにパタリとテーブルに倒れ込んで、そのまま動かなくなった。


寝言なのか、”真奈”と一言呟いた彼の一言。
それに切なくなって、もう眠りに堕ちた彼の髪の毛を優しく撫でた。







「あれ〜、A？こんなとこで何してんの。」


間の抜けた声が降ってきて、手を離す。



声の方をみると
ぽてりとした唇の間に隙間をつくり、きょとん顔で彼が立っていた。

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