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「なぁ、A。お前さ、そろそろこの館から出た方がええんとちゃう?」
俺はそうして長い黒髪を揺らす魔女のAに声を掛けた。
魔女の住む館、として知られているこの館にもう直国の剣士達や魔女狩りを目的としている軍団がやって来るかもしれないのだ。
「誰が出て行くか。お前が世界一の剣士だと言うから安心してここで暮らしているのに」
「ホンマ頑固やな。護る護らん以前にここ危険やから逃げよう言うてるやん」
この魔女と出会って十数年が経った。
最初は俺がこの館に「魔女を倒しに行く!」などと豪語して迷い込んだ所、魔女の魔法に引っ掛かってしまったのだ。
それから色々彼女と言葉を交わした。
幼い頃は魔女が悪いものだ。と言うイメージしかなかったのだが、それはどうやら違っていたようで。
彼女と会話を重ねて行く内に悪いのは人間の方だと言うことが分かった。
意味も無く魔女を殺し、罵詈雑言を浴びせて来た。
彼女は目の前で両親を殺された、と言っていた。
いつもならば弱音は吐かないのだが、酒に酔っていたせいか、その日だけはやけに素直に弱音を吐いていた。
「両親が目の前で殺された。センラが来るまで寂しくて寂しくて消えてしまいそうだった」
「センラが居ないとこの先も生きて行けない。センラが護ってくれよ」
だなんて。
プロポーズみたいな言葉を平然と吐くものだから驚きはしたものの、近くに居てやりたいと言う思いの方が強かった。
「センラ。私のような魔女が悪い者ではないと証明するにはどうしたらいい?私も人間を毛嫌いしている訳ではないのだ」
「そんなの話したらええやん。俺も話し付けたるし。少しずつ人間の仲間でも増やしたら?」
「だが、人間だぞ?どんな小賢しい手を使ってくるか分からん。挙句の果てにお前が洗脳されたとか言い兼ねん」
「じゃあ分からへんわ!」
いつもならば大胆に行動に移す癖に、人間の事となるとこうも億劫になるのは両親が人間に殺されたトラウマであろう。
俺だって、彼女が悪い奴でないことを人間の皆に分かって欲しいし、こんなひっそりとした生活だなんて面白くない。
「……分かった!Aがドラゴンでも倒せばええやん!人間の前で!」
「…は?」
「そして人間救うねんて!そしたら人間も分かってくれるやろ!」
***
9月○○日
センラが来て約十三年経った。後少しでセンラの18歳の誕生日だから祝ってやりたい。
やはり、センラは私にとって大切な存在だ。
***
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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
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