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「ごきげんよう、そらるさん」
「んん。また来たの?」
「あら。独りで空を見上げているだけの貴方の相手をしてさしあげているのよ? 感謝してほしいものだわ」
「はいはい。いつもありがとう」



甘く熟れた林檎の頭に、ピジョンブラッドの瞳。燦々と輝く太陽の明るさに、夕暮れの儚さを混ぜ込んだような少女。名をAという。

いつの間にか、俺の日常に溶け込んでいた。彼女だけが日々の癒しで。なんなら、Aに逢うためだけに城を抜け出している、なんて。さすがにそれは、気の所為だ。


どちらかが持ち込んだ菓子を片手に、他愛のない音を交じわす。好きなものだったり、彼女の家族の話だったり。時にはうたた寝なんてして。概ね平和で、充実した日常。




ただ、どうても解決出来ない問題が3つある。

ひとつ。俺がオオカミの一族である、という事。

ふたつ。彼女が赤ずきんの一族である、という事。

みっつ。(オオカミ)彼女(赤ずきん)を愛してしまった事。




毎晩毎晩、寝る前に考える。どうすれば良いのか。
オオカミを捨てるには、愛着を持ちすぎている。彼女を赤ずきんから引き抜くのは、話が違ってくる。

ならば、彼女を諦めるのか。否、Aは、俺の隣にいてもらわなくては。

堂々巡りを始める思考が、眠気に負けるその瞬間まで脳味噌をフルに使い、一日を終える。


いつもなら。


そう、変化が訪れるのは、いつも突然なのだ。


微睡む脳を掻き乱すように、城中に、森中に、警鐘が鳴り響く。(そら)を裂き、(くう)を駆け、鼓膜を揺さぶる。



「どうした! 何があった!」
「侵入者です、王! 赤ずきんの軍団が、攻め入って来ました!」



布団を跳ね除け、ベッドから飛び降りる。素早く愛剣を身に履き、扉を開け放てば、不寝番の兵が声を上げる。最後まで報告を聞く必要はなかった。


『侵入者』


それが、誰を指すのかが、分かってしまったから。確信はなかった。だが、予感はあった。当たらなければ良いと思っていた。



「ごきげんよう、そらるさん」
「やっぱり来たんだね……A」



白い月に照らされて尚、その色を褪せる事のない彼女。やはり赤が映えるな、と能天気な事を考えながら、眉間に照準のあった銃口を見つめた。

*→←【そらる】赤青の果てに。/白椛



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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年5月3日 1時

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