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明らかに眉根を寄せて不機嫌そうな、顰めっ面のほくちゃんにマスク越しに鼻をつままれた。
ひどいこの人、と思いつつも、ぷりぷり怒って真剣なムードが霧散したことに少しだけ安堵する。
「じゃあ、俺ね」
「うん。…あ、答えられる範囲のやつね」
「絶対答えさせるから大丈夫」
「…いやこわいわ」
「あー!!!」
「えっなに!?」
「心の準備!」
「その大声が!?」
「緊張すんの!」
何故か半分怒ったようにそう言われたと思ったら、ほくちゃんの胸板まで無理やり右手を連れて行かれた。
確かにどくどくと音を立てる心臓が早い。
でもそんなことより自分の指先の体温とか、手汗かいてないかなとか、余計なことが気になってしまう。
「A」
「は、はい」
「俺と付き合ってくれませんか?」
ごくり、と生唾を飲み込む。
真剣な眼差しは、暗がりの下で何故か少し潤んでいるようにも見えて逸せない。
恐れてはいたけど、勿論予想通りのものだ。
でもいざ言われてみると、喜びも緊張も動揺も、過去のこと未来のこと色んな事を考えて感情がぐちゃぐちゃに塗り潰されそうだった。
自分で決めていたはずの答えが、ぐらりと音を立てて揺らぐのを感じる。
「そ、れは」
「俺、答えはひとつしか受け付けないから」
「いやそれ質問でもなんでもないじゃん…」
「だって俺はAが好きだし、Aも俺のこと好きでしょ?」
「ちょっ!?!?」
「なのに、断られる理由がわかんないし」
「いやっでもその、色々あるじゃん。付き合うとか私たちは、」
「それは前にも聞いたから。俺はAの気持ちを聞いてんの」
真っ直ぐに伝えられる気持ちに段々と思考が溶けていく。
私は、ほくちゃんが好きだけどずっと片想いだったけど、もしほくちゃんも私のことが好きなんてことが起こっても一時の夢だから。
覚めた時に自分が痛くないように、1人でもちゃんとまた元気に過ごせるように、傷付かないように自分で答えを選んだはずだ。
だから、
「A、だいすき。ずっと、誰よりも1番すき」
急に引き寄せられて捕まった腕の中。
距離なんて0に等しかったのに、2人の間にはその身に纏うもの以外何も無くなって、ぎゅっと抱きしめられた。
頬に軽く触れ、耳朶を食んで掠め、耳元に寄せられた唇が甘い音を紡ぐ。
目を瞑ればほくちゃんの匂いに惑わされて、鉄壁の建前がガラガラと崩れ落ち、目の前の幸せしか目に入らなくなる。
こくり、ひとつ頷くと世界が変わった。
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も。(プロフ) - usaさん» コメントありがとうございます!この一番もどかしい時間を楽しみながらのんびり進めていけたらと思います。更新ペースも早い方ではないですがまた覗いて頂けたらと思います(T_T)ありがとうございました! (2020年7月21日 13時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
usa(プロフ) - 今回の更新もとっても面白かったです。早くほくちゃんとくっついて欲しいような、付かず離れずのもどかしい距離が楽しいような…!今後の展開も楽しみにしていますのでご自身のペースで無理せず更新がんばってくださいね。引き続き楽しみにしております! (2020年7月20日 22時) (レス) id: c80ccd6f24 (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - 飴さん» ご意見ありがとうございます^ ^長文かつストーリーが遅いことは明記させて頂いており、また趣味かつ自己満足の作品ですので読んで頂くことを強制しておりません。合わないと思いましたら読むことを辞めて頂いて構いませんよ。お時間を割いて頂きありがとうございます。 (2020年7月18日 15時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - 何度も続けてのコメントですみません。 長々と失礼なコメントで失礼致しました。 それでは...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - またまた続けてのコメントですみません...。 そして台詞の行間隔あけたほうが良いと思い ました。 行間隔が詰まっていると読みにくいので...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:も。 | 作成日時:2020年4月25日 23時