居座る欲望について ページ33
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この奇妙な同居生活は、甘ったれた中途半端な私に付き合ってくれてる彼の優しさでできていることだって、とうに分かっていた。
知らぬ存ぜぬのフリもそろそろ限界が近いことも、我慢が得意ではないだろう彼の優しさがずっと続くはずないことも。
良くも悪くも変化を恐れる私に、その時が訪れるのは当たり前のことだった。
その日のほくちゃんは、今思い返せばあからさまに様子がおかしかったように思う。
ずーっと上の空だったし、普段はべらべら喋ってしょうもないちょっかいも多かったのに、その日は人が変わったように大人しかった。
初めは寝起きが悪いだけかと思った。
仕事がいよいよ動き出しそうなのはお互い様だし、そういう日もあるよなあとそっとしておいて仕事を進めていたんだけども。
それが後々裏目に出るなんてことは露知らず。
それでも今日も美味しいご飯を作ってくれて、ドラマも映画も見ずに早めにお風呂に入ったほくちゃん合わせて自分も入り、早めに2人でベッドに入った時に、漸く違和感を覚えた。
違和感というかこれは、既視感という気がする。
おやすみを交わしてから暫く、この何とも言えない気まずい空気。
いつもの如くほくちゃんに背を向けて横になっているけれど、背中にビシバシ視線が突き刺さってくる。
「A」
後ろから囁かれる甘い声に、仕方なく寝返りを打つと、嫌に真剣なほくちゃんの眼差しに捕まって逃れられない。
ああそうだ、これはあの時と同じなんだ。
「ね、Aゲームしよ」
「…質問に、嘘つかないで答えるやつ?」
「そう、イエスかノーか。今日は一個でいいから」
「やんなきゃだめ?」
「今日は、ちゃんと聞いて欲しい」
「…それ、終わったらすぐ寝るからね」
「うんわかった」
逃げ道を探す私にきっとほくちゃんは気付いてる。
私が真剣なほくちゃんには弱いってことも、きっと。
こんなの、もう私が折れたも同然だ。
でも、形だけになってしまったとしても、そういう素振りを見せないと、後で辛くなるのも自分自身だった。
Aからでいいよ、の言葉に少し考える。
ほくちゃんに決定打を打たれる前に、できることは限られていた。
「ほくちゃんは、」
「うん」
「私とのこと、全部含めて、後悔してませんか?」
「…何でそんなこと今更聞くの」
「い、イエスかノーでしょ!」
「当たり前過ぎて話になんないし、後悔するようなことしてないししない」
「…てことは?」
「イエスに決まってんじゃん!」
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も。(プロフ) - usaさん» コメントありがとうございます!この一番もどかしい時間を楽しみながらのんびり進めていけたらと思います。更新ペースも早い方ではないですがまた覗いて頂けたらと思います(T_T)ありがとうございました! (2020年7月21日 13時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
usa(プロフ) - 今回の更新もとっても面白かったです。早くほくちゃんとくっついて欲しいような、付かず離れずのもどかしい距離が楽しいような…!今後の展開も楽しみにしていますのでご自身のペースで無理せず更新がんばってくださいね。引き続き楽しみにしております! (2020年7月20日 22時) (レス) id: c80ccd6f24 (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - 飴さん» ご意見ありがとうございます^ ^長文かつストーリーが遅いことは明記させて頂いており、また趣味かつ自己満足の作品ですので読んで頂くことを強制しておりません。合わないと思いましたら読むことを辞めて頂いて構いませんよ。お時間を割いて頂きありがとうございます。 (2020年7月18日 15時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - 何度も続けてのコメントですみません。 長々と失礼なコメントで失礼致しました。 それでは...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
飴 - またまた続けてのコメントですみません...。 そして台詞の行間隔あけたほうが良いと思い ました。 行間隔が詰まっていると読みにくいので...。 (2020年7月17日 19時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:も。 | 作成日時:2020年4月25日 23時