DOPE 麻薬取締部特捜課 3 (ページ4)

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「五億円盗難事件の真相も、警察官と麻薬組織の癒着も、陣内の復讐も、あちこちで毎日のように報道されてたが、今じゃすっかり落ち着いたもんだ。飽きやすいっていうか、世間の移ろいは早いもんだ」

あの日からの日々はあっという間だった。
警察や麻取という悪を取り締まる側の犯罪ということもあって、テレビや雑誌やで事件のことが取り上げられると人々の大きな話題となった。
そのおかげで、陣内さんは一躍世紀の凶悪犯となった。
私たちは世間的には鳥飼商事という全く関係ない会社にいるので直接的なダメージは少なかったけど、批判をもろに受けた麻取本部とやり取りをしている課長は肩身が狭い思いをしているに違いない。

「あの…、ずっと気になってることがあるんですけど」
「なんだ」
「陣内さんは本当に、戸倉さんを殺したんでしょうか」
『才木君、』

あのときのことは、何となく言ってはいけないことのようになっていた。
あまりに非現実的すぎて、私たちが事実を受け入れられていなかったというのもある。

「お前ら、見てたんだろ？」
「そうなんですけど」
「陣内の衣服から硝煙反応も出てる。目撃者も証拠も揃ってる。何が引っ掛かる？」
「陣内さんは復讐を止めようとしていたんです！でも急に、様子がおかしくなって…。戸倉さんを撃った後、陣内さんも自分がしたことをよく分かってない感じでした」
「Aもそう思うのか？」
『…はい。陣内さんは、戸倉さんを撃つつもりじゃなかったと思います。それなのに、突然誰かに操られたみたいになって』

こんなことになるなら陣内さんから拳銃を取り上げておくべきだったと思うのは、たらればが過ぎるだろうか。

「何かの異能力なんじゃ」
「…」

課長が何かを考えるようにして、そのまま固まった。

「課長、」

課長の首から力が抜ける。
その様子は、あのときの、私たちに背を向けた直後の陣内さんと同じだった。

「課長？課長！課長、」
『才木君離れて』

心配して課長の肩を叩く才木君を課長から遠ざける。

「なかなか鋭いですね。才木優人、君」
「え…？」

一定の距離を保ったところで、課長がゆっくりとこちらを振り返った。